JNCなど 下水中のコロナウイルス、磁気分離技術開発

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2021年12月20日

 JNCと山梨大学大学院総合研究部附属国際流域環境研究センター(原本英司教授)はこのほど、JNCの特許技術であるPegcision(ペグシジョン)法を用いた世界最速レベルの下水中の新型コロナウイルス分離技術を共同で開発したと発表した。

 コロナ感染症が猛威を振るう中、日本では諸外国と比較して、PCR検査の感度が格段に向上。その結果、下水中の新型コロナウイルスを定期的にモニタリングすることで感染流行の早期検知が可能となる「下水疫学調査」に大きな期待が寄せられている。しかし、唾液や血液とは異なり、大量の下水からの新型コロナウイルスを効率的に分離し、濃縮するための技術がなく、下水疫学調査の普及に大きな障害となっていた。

 今回、ペグシジョン法を用いることで、下水からの新型コロナウイルスの分離が30分程度で可能となった。その回収率は日本水環境学会COVID‐19タスクフォース「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」で推奨されているポリエチレングリコール(PEG)沈殿法(処理時間9時間以上)と同等であることを確認している。さらに、ペグシジョン法では、新型コロナウイルスを磁石で分離することからスループットが高く、一般的な磁気分離装置で大量検体の処理もできる。

 両者は今後、ペグシジョン法は、PEG沈殿法をはじめとする従来のウイルス分離技術と比較して、迅速、簡便、高収率で、かつ低コスト(抗体などは不使用)な手法であることから、早期の新型コロナウイルスの下水疫学調査普及につながるよう、引き続き技術開発を進めていく。

ペグシジョン法の濃縮原理
ペグシジョン法と他の濃縮法との比較

タカラバイオ 下水中のコロナ検出、PCRキットを発売

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2021年9月28日

 タカラバイオはこのほど、下水に含まれる新型コロナウイルス遺伝子を高感度かつ迅速に検出可能なPCRキットの受注を開始した。

下水中の新型コロナウイルス遺伝子をに検出できるPCRキット
下水中の新型コロナウイルス遺伝子をに検出できるPCRキット

 多くの感染者の糞便中には、ウイルスが存在する可能性が報告されており、下水中に排出されたコロナウイルス遺伝子を定期的にモニタリング調査することで、対象施設あるいは地域の感染症の流行状況などを把握する下水疫学に関わる研究が進められている。

 同製品は、下水からのコロナウイルス遺伝子検出に必要なPCR試薬(PCR酵素液、プライマー・プローブ、陽性コントロールなど)が含まれたオールインワンキットで、煩雑な準備作業の省力化に貢献する。

 プライマー・プローブには、「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」の記載に準拠した配列を使用し、従来の検出法を簡便に実施できる検査キットとして製品化。下水中のコロナウイルスに加え、ウイルスの濃縮から検出までの操作を確認するためのプロセスコントロールの検出にも対応する。

 同製品では、ワンステップRT-PCR法の採用により、下水中の低濃度のコロナウイルスを高感度に検出できる。また、従来はRT-qPCR反応に3時間以上を要したが、同社の高速PCR技術の採用により、同製品では最短で約50分へ大幅に短縮された。

 なお、同製品は、山梨大学大学院総合研究部附属国際流域環境研究センターの原本英司教授との共同研究を通じて製品化した。同製品により下水中のコロナウイルス遺伝子検出の迅速・効率化を実現することで、コロナウイルス感染の疫学調査・研究に役立つことが期待される。