日亜化学工業 小型・高電力変換効率の深紫外LEDを上市

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2021年10月20日

 日亜化学工業はこのほど、深紫外LED(ピーク波長280㎚)の新製品「NCSU434B」の量産を開始した。製品サイズは3.5mm角と小型で、同サイズの深紫外LEDとしては業界最高クラスの電力変換効率と放射束をもち、高密度実装での単位面積当たりの放射束は従来品の約3倍だ。

 日立造船と長崎大学感染症共同研究拠点安田二朗教授によるマイクロ飛沫状の新型コロナウイルス(アルファ株、英国型変異株)の不活化実験で、1回通過させるワンパス試験で、約1mJ/㎠の積算光量で感染価が10分の1以下(ウイルス生存率4.5%)になることが確認された。

 深紫外線の不活化メカニズムはウイルスRNAの直接変性によるため、デルタ株をはじめ英国株以外の新型コロナウイルスの変異株にも同等の効果が期待できる。マイクロ飛沫状の各種ウイルスの不活化や細菌の除菌にも有効であり、今後、空間除菌に加えて水除菌、近接表面除菌など広く用途展開し、安心して生活できる社会の構築に貢献する。

 同社は今後も引き続き、より性能を向上した深紫外LED製品の開発に注力していく考えだ。

産総研と日亜化学 全方向型標準LED光源の試作に成功

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2021年10月13日

 産業技術総合研究所(産総研)と日亜化学工業は、LEDを使用した全方向に可視波長全域の光を放射する標準光源の試作品を共同開発した。照明産業の持続的な発展への貢献と、照明光源の評価の高精度化が期待される。

 照明光源の明るさの指標である全光束は、標準光源との比較測定で決定される。標準光源には、主に白熱電球形の標準電球が使われるが、全方向光放射に適した形状のフィラメントやガラスバルブなどは熟練職人の手作りである上、LED照明の普及による白熱電球生産の縮小・停止の影響もあり、代替の標準光源が必要とされている。

 標準光源には光強度の安定性や再現性、可視波長全域をカバーするスペクトル、光を全方向に放射する配光性が求められるが、これら全てを高い次元で満足する代替光源はまだない。

 両者は産総研の「スペクトルの定量的精密測定・解析技術」と日亜化学工業の「高度なLED製造技術」を組み合わせ、可視波長全域の光を前面に放射する標準LEDを2016年に開発。そこで培われた光強度安定化技術とスペクトル最適設計技術に特殊な光学系を組み込むことで、可視波長全域の光を全方向に均等に放射する全方向形標準LEDの試作品の開発に成功した。

 複数のLED素子と蛍光体の組み合わせを最適化し、広い可視波長範囲と安定した光強度、十分な光量を得た。温度制御機構で発光部の温度を一定に保つことで、連続点灯、複数回繰り返し点滅、周囲の温度変化に対する光強度の変動は、既存の標準電球と同程度だ。また、光を後方に導くキャップ型の光学系を組み込み、標準電球のフィラメント形状に起因する細かな凸凹のない、滑らかで均等に全空間に広がる配光を得た。

 こうして全光束測定用の標準光源として理想的な配光特性を実現できた。市販の電球形LEDランプの全光束測定を想定し、それと同程度の大きさだ。今後は、全光束値と光源の大きさのバランスを見極めつつ、必要な全光束値を得るための点灯電流レベルに応じた放熱機構を最適化し、実用化を目指す。また全方向形標準LEDでの測定精度を上げるため、全光束や分光測定方法の高度化を進める考えだ。

日亜化学工業 深紫外LEDの新型コロナ不活化効果を確認

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2021年2月5日

 日亜化学工業はこのほど、同社製280㎚深紫外LEDの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果を確認したと発表した。徳島大学による実験の結果、新型コロナウイルスに対して30秒の紫外線照射で99.99%の不活化効果が得られた。新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(経済産業省)では、除去効果については99.99%以上の感染価減少率を目安に有効性を判断している。

 流水での手洗いでは15秒で99%程度、消毒用アルコール(エタノール濃度77~81%)では30秒で99.99%とされる。しかし、流水では十分なもみ洗いが、消毒用アルコールでは十分量のアルコールの接触が必要で時間や手間を要するが、深紫外LEDでは短時間で手間なく高い殺菌効果が期待できる。深紫外LEDによる殺菌パワーは、波長別殺菌効果と光出力の積で求められる。波長別殺菌効果は、260㎚波長が100%で最も有効とされ、同社開発中の265㎚品は95%、280㎚品は60%だ。

 一方、光出力は、280㎚品の70㎽に対し、265㎚品は35㎽。従って、280㎚品の殺菌パワーは265㎚品の約1.3倍高い。またLEDの推定寿命は280㎚品が約2万時間と、265㎚品の約10倍だ。紫外線LEDは波長が短くなると出力、寿命などが低下し、電力変換効率が極端に低くなることを踏まえ、今回280㎚品で不活化実験を行った。照射距離5cm、照度1.7㎽/㎠の条件で、5秒で93.28%、10秒で98.42%、30秒で99.99%の不活化効果を示した。このピーク波長280㎚のLEDは、放射束70㎽、電力交換効率3.6%と業界最高レベルだが、今後、より殺菌効果の高い高出力深紫外LEDの開発に注力するとしている。

NEDOなど 従来比6倍速の銅コーティング加工機を開発

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2020年7月28日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、大阪大学、ヤマザキマザック、島津製作所と共同で高輝度青色半導体レーザーを用いた、高速・精密銅コーティングが可能なハイブリッド複合加工機を開発した。

 レーザーコーティングは従来のスパッタやメッキ、溶射と異なり、レーザーで金属粉末を溶接する技術。密着強度が高く耐久性に優れ、大気雰囲気下で処理できる。また、マルチビームの加工技術により、1本の粉末ビームに複数のレーザービームを照射し効率的に加熱、溶融、凝固させる。従来の近赤外線レーザーでは金や銅の加工は困難であったが、青色半導体レーザーは金属への吸収効率が高く、金や銅などの加工に適する。特に銅は、その高い熱・電気伝導性から高精度が必要な航空・宇宙・電気自動車産業への活用が期待される。また細菌の殺菌・抗菌、ウイルスの不活化作用から、感染リスク低減のための手すりやドアノブへの利用が始まっている。

 今回、日亜化学工業と村谷機械製作所の技術協力で開発した200W高輝度青色半導体レーザーを3台装着し、600W級マルチビーム加工ヘッドを開発。レーザー集光スポットのパワー密度が上がり、金属材料への銅のコーティング速度が従来の6倍以上に向上、多層コーティングも可能になった。1走査あたりのコーティング幅も従来比2.5倍の1mm程度まで増大できる。

 噴射した銅粉末を直接加熱するため母材表面の溶融を必要最小限とし、母材金属の混入が少なくゆがみの小さな精密コーティングが可能である。直線3軸/回転2軸の5軸同時制御加工ヘッドのハイブリッド複合加工機で、複雑形状の部品に高速・精密コーティングできる。現在、石川県工業試験場と大阪富士工業で銅コーティングの基礎データベースの構築と銅コーティング部材の開発を進めている。

 NEDOプロジェクトは青色半導体レーザーのさらなる高輝度化を進め、ヤマザキマザックは?級青色半導体レーザーマルチビーム加工ヘッド搭載、コーティング速度十倍以上のハイブリッド複合加工機の来年の製品化を目指している。

三菱ケミカルなど LEDに関する特許が米国で成立

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2018年10月2日

 三菱ケミカル、物質・材料研究機構、日亜化学工業、シチズン電子はこのほど、4者が共有するLEDに関する特許が米国で成立したと発表した。

 この特許(米国特許第10072207号)は、赤色蛍光体として窒化物系赤色蛍光体を用いるもの。高い輝度と信頼性から、白色LED用として最も広く使われている赤色蛍光体で、一般に、CASNあるいはSCASN蛍光体、1113蛍光体と呼ばれている。

 4者はLED用として広く用いられるこの赤色蛍光体に関し、特許を相互に実施許諾することで2015年に合意している。実施許諾の対象となる特許のうち、この赤色蛍光体基本特許は すでに米国で成立して、4者で共有しているが、今回さらに、赤色蛍光体を用いたLEDに関する基本特許も米国で成立した。

 4者は赤色蛍光体と、これを用いたLEDに関する特許群について、他社がこれらの特許群を侵害する場合、適正な対応を取る考えだ。