産総研 東京湾岸をゼロエミッション版シリコンバレーに

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2020年6月11日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、東京湾岸周辺エリアを世界に先駆けてゼロエミッション技術に係るイノベーションエリアとするため、「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会(ゼロエミベイ)」を設立した。会長は東京工業大学特命教授・名誉教授の柏木孝夫氏が就任し、事務局は1月に産総研が設立した「ゼロエミッション国際共同研究センター(CZR)」(センター長は旭化成名誉フェロー吉野彰氏)が担う。

 東京湾岸には、電力・ガス・石油・化学・電機・自動車など多様なエネルギーサプライヤーやユーザーなどの事務所や研究施設、大学が多くある。これらが様々な分野で連携すれば、ゼロエミッション技術に関する世界最大の研究開発・実証に関するPRの場所となり得る。 

 こうした中、政府が今年1月に策定した「革新的環境イノベーション戦略」の下、産学官の協議会を設置し、中長期的な視点でゼロエミッションに関する研究開発・実証プロジェクト(水素利用、二酸化炭素回収・有効利用・貯留、エネルギーマネジメントなど)の企画・推進、広報活動などが提言された。

 それに基づき、ゼロエミベイでは主な活動として、①湾岸周辺エリアの企業、大学、研究機関、行政機関などの活動情報を含むエリアマップ「ゼロエミベイマップ」の作成と海外への発信、②研究開発・実証プロジェクトの企画・推進と成果の普及・活用、③同技術に係る研究開発・実証、ビジネスへの取り組みに関する会員間の情報交換と連携の推進、④目的達成に必要なその他事業、などを行う。

 今後、趣旨に賛同し東京湾岸エリアでゼロエミッション活動を行っている会員を募集し、設立総会を6月16日に開催する。その後「ゼロエミベイマップ」をウェブサイトに掲載するなど本格始動する予定だ。入会案内などの詳細は、専用サイト(https://unit.aist.go.jp/gzr/zero_emission_bay/)まで。

ノーベル賞の理論と技術が拓く未来、持続可能社会に貢献

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2019年12月12日

 スウェーデン・ストックホルムで現地時間の10日、ノーベル賞授賞式が行われ、日本からはリチウムイオン電池(LIB)の開発者で旭化成名誉フェローの吉野彰氏が式に臨み、ノーベル化学賞が授与された。

「エコプロ2019」で展示した環境省のコンセプトカー「AGV」
「エコプロ2019」で展示した環境省のコンセプトカー「AGV」

 環境省は現在、CO2を大幅に削減する低炭素モビリティ社会の実現を目指し、次世代型自動車の開発を進めるが、そこには日本発のノーベル賞の理論や技術が大きく寄与している。

 先日開催された「エコプロ2019」で、環境省が出展したAGV(All GaN Vehicle)は、次世代半導体材料であるGaN(ガン:窒化ガリウム)を電動化技術に適用したEV(電気自動車)のコンセプトカー。GaNインバーター(逆変換装置)を搭載することで変換効率を向上させ、CO2排出量の約20%削減を目標にしている。

 GaNは元々、青色発光ダイオード(LED)の材料として開発されたもの。「高輝度・低消費電力白色光源を可能とした高効率青色LEDの発明」の功績で赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3氏が2014年のノーベル物理学賞を受賞した。

 インバーターは、バッテリーの電力をモーター用の電力に変換する装置。一般的にシリコン系のパワー半導体が用いられるが、それをGaN系パワー半導体に置き換えることで変換効率が20%向上した。EVなら、LIBの性能を高めることなく走行距離の延伸を可能にする技術と言える。

 8日のノーベル賞記念講演「ノーベルレクチャー」の中で吉野氏は、LIB開発の技術的なルーツには過去のノーベル賞の業績が関わっていると説明。1981年のノーベル化学賞、福井謙一氏らの「フロンティア軌道理論」と、2000年同賞、白川英樹氏らによる「導電性高分子、ポリアセチレンの発見」を挙げ、多くのノーベル賞受賞者のサポートが負極材の開発につながったと語った。

 奇しくも福井氏の孫弟子にあたる吉野氏が、LIBの研究を始めた年が1981年。二次電池の電極としてポリアセチレンに着目した。

 環境省が行うAGVを含めたプロジェクトには、GaN発明者の天野氏も参画する。高品質・大口径・低コストのGaNウエハーを開発し、超高効率なパワーデバイスを実機に搭載することで、省エネルギー効果の実証を目指している。世界に認められた日本の技術が結集し、来るべき持続可能な社会に大きく貢献していく。