《化学企業トップ年頭所感》日本化学工業協会 森川宏平会長

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2022年1月7日

 一昨年、昨年と世界を揺るがせている新型コロナウイルス感染症の状況は、新たな変異型が確認され市中感染者も生じるなど、その脅威が未だに続いている。化学産業も引き続き、感染対策・安全対策を万全にし、健康で豊かな生活に必要不可欠な製品を安定供給していく。

 一方、昨年は世界がカーボンニュートラル(CN)実現に向けて大きく動き出した。4月に米国主催で気候サミットが開催され、10月末から英国グラスゴーで開催されたCOP26において、「産業革命からの気温上昇を1.5℃に抑える」という目標が合意されるなど、世界全体で気候変動対策に取り組むことが確認された。日本においても、2050年CN実現に向け、政策の具体化が進んでいる。

 CNは化学産業にとっても大変重要な目標だ。日化協は昨年5月、「製造時のGHG排出削減」「製品・サービスを通した社会全体でのGHG排出削減への貢献」を骨子とした「カーボンニュートラルへの化学産業としてのスタンス」を策定した。製造時の排出削減として、原料転換・エネルギー転換に取り組み、地中に賦存する化石資源の使用を低減していくことが必要になる。プラ廃棄物やCO2、バイオマスなど原料として製品化し炭素循環させることにより、化石資源依存から脱却し製造時のGHG排出削減に貢献できるのが、化学の大きな特長だ。本年はこれらのイノベーションの社会実装の加速に向け活動する1年としたい。

 また、軽量化材料、風力発電・太陽光発電といった再生可能エネルギー創出を支える材料などの製品・サービスを通じ、社会全体でのCNに貢献することも化学産業の役割になる。こうした化学産業の貢献が社会全体に認められるよう、日化協は、環境負荷や社会全体での削減貢献を可視化するなど、消費者の行動変容につながる仕組みづくりにも取り組んでいく。

 本年も、化学産業はソリューションプロバイダーとして、経済成長と持続可能な社会づくりの両立のため、製品の安定供給とCNに資するイノベーションを通じ、社会に貢献していく。

日化協 定例会見開催、景気動向や活動などを報告

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2021年12月22日

森川会長「今年は、世界がCNに動きだした1年」

 日本化学工業協会はこのほど、定例となる森川宏平会長(昭和電工社長)の会見を開催した。

森川宏平会長

 7―9月期の全般的な景気動向について森川会長は「コロナ禍による厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、引き続き持ち直しの動きに弱さが見られる。経済活動が正常化に向かい景気の回復が期待される一方、

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《化学企業トップ年頭所感》日本化学工業協会 森川宏平会長

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2021年1月7日

 昨年は感染症拡大により世界的に不安と混乱、経済の停滞が起こったが、デジタル化や働き方改革、カーボンニュートラルや循環経済などの持続可能な社会の志向など、起こるべき変化にスピードが加わった年だった。

 今年は良い変化をさらに進める年だ。

 米国も政権交代で環境・経済政策が大きく転換するとの予想だが、わが国もデジタル化、グリーン化を政策に掲げている。

 様々な産業で大きな変化が起こる可能性があり、それに対応して求められるものを提供するのが化学だ。デジタル化とグリーン化の発展にも、多くの化学製品が必要とされる。生活様式の変化や働き方改革でデジタル技術が進化するが、化学産業はその利用者であると同時に、カギとなる材料の提供もしている。風力・太陽光発電などの再生可能エネルギー創出や二次電池、軽量化材料など省エネルギーに資する製品も提供している産業だ。

 必要不可欠な材料を安定供給し社会の信頼に応えるには、「製造時」「製品自体」「使用後」の「安全と環境に対する配慮」が必要だ。日化協は化学品管理や低炭素社会実行計画などを最重要テーマとし、レスポンシブル・ケア活動を継続している。カーボンニュートラルへの貢献も、LCI(ライフサイクルインベントリ)やcLCA(カーボンライフサイクルアナリシス)などライフサイクルでの定量的評価で明確化する。

 昨年9月発表の政策目標「2050年カーボンニュートラル」は野心的ではあるが、持続可能な社会構築のためのあるべき姿だ。ケミカルリサイクル、CCU(CO2原料利用)、人工光合成など化学産業が進める技術革新への期待は大きくなる。この取り組みは、日本の化学産業が国際競争力を保つ上でも重要だ。

 日化協は、柱の1つであるプラスチックのケミカルリサイクルを推進すべく、昨年末に「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿」を策定した。実現には、環境価値を認める社会醸成などの課題も多い。日本全体として力を発揮できるよう、政府・行政、企業と連携して取り組んでいく。

 今年も、化学産業はソリューションプロバイダーとして、経済成長と持続可能な社会づくりの両立のため、不断の努力とイノベーションを継続していく。

《化学団体年頭所感》石油化学工業協会 森川宏平会長

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2020年1月8日

 昨年を振り返ると、9月の台風15号と10月の19号・21号に象徴される想像を超えた自然災害の発生があった。15号による強風の被害は大きく、千葉県を中心に停電が長期に続くなど市民生活に甚大な被害をもたらした。

 19号は長野や関東から東北までの広域にわたり記録的豪雨による水害を引き起こし、物流網の寸断などのインフラの脆弱性を痛感させられた災害となった。被災地の皆さまには心からお見舞いを申し上げるとともに、被災地の1日も早い復興をお祈り申し上げる。

 また、昨年5月には今上陛下が即位され令和がスタートし、日本中に祝意があふれた年でもあった。今年令和2年は、半世紀ぶりに日本で夏季オリンピックとパラリンピックが開催される。大会の競技への支援はもちろん、訪日される各国の観光客に対しても、日本の良さをアピールする絶好の機会だ。2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功を祈念している。

 さて、世界経済を見ると、昨年は米中の貿易摩擦の影響が顕在化した年で、世界経済の下振れリスクの拡大は、もはや単純な2国間だけの問題ではなく、グローバル化された世界におけるサプライチェーンへも大きな影響を及ぼしており、世界貿易量の減少は、わが国でも内需としている「間接輸出製品」の大きな落ち込みに表れている。

 わが国としては、環境の変化に迅速かつ機敏に対応することが求められる年であり、石油化学業界としても正面から内外の課題に引き続き取り組んで行くことが重要と考えている。

 国内の石油化学業界の状況を見ると、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降72カ月連続で90%超を維持しており、実質的フル稼働になる95%以上は2015年11月から昨年の11月までの間で5カ月を除く通算44カ月連続だった。なお、昨年8月以降の3カ月は、夏場の暑さや台風の影響により95%を割り込んだが、11月には再び95%超えとなった。

 このような高稼働が継続しているときこそ安定供給責任を果たすため、さらなる保安・安全の確保が重要となる。このような状況下、当協会としてはわが国の石油化学産業の持続的発展に向け「保安・安全の確保」「事業環境の基盤整備」「グローバル化対応の強化」に取り組んでいく。

 このほか、会員各社共通の課題である機械・電気系エンジニアの採用支援を目的とするキャリアセミナーの全国各大学での開催、サイバーセキュリティーの面で、今年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けた対応力強化のサポートにも注力していく。さらに各種刊行物の発行やマスコミなどのステークホルダーへの情報発信といった、幅広い広報活動も引き続き展開していく。

石化協 森川会長が改めて「保安・安全の確保」に言及

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2019年7月8日

 石油化学工業協会(石化協)は4日、定時総会・理事会終了後の懇親パーティーを開催し、あいさつを行った森川宏平会長(昭和電工社長)は「安定供給責任を果たす意味でも、保安・安全の確保が全てに優先する最重要課題」と述べ、会員各社に引き続き事故・災害ゼロに向けた取り組みを求めた。

 また、石油化学コンビナートの国際競争力を維持・向上させていくため、定修のあり方について、関連業界と連携し、関係省庁・当局にも相談しながら検討を進めていくとした。

 一方、化学産業にとって喫緊の課題である海洋プラスチック問題については、G20大阪サミットで、2050年までに新たな汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されたこと、G20エネルギー・環境大臣会合で、海洋プラスチックごみ対策実施枠を創設して、各国の政策状況に応じて自主的に取り組むことが合意されたことに言及。今後、同問題に関しては、国内外の関係機関と連携して、科学的知見を蓄積しつつ、海外、特にアジア地域に対して情報発信をしていく方針を示した。

 森川会長は最後に「当協会は引き続き、

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《化学団体年頭所感》 石油化学工業協会 森川宏平会長

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2019年1月8日

 昨年を振り返えると、いくつかの甚大な被害をもたらした自然災害の発生があった。6月の大阪北部地震、6月末から7月初めには西日本豪雨が続き、9月に入ると近畿地方に上陸した台風21号と和歌山から本州を縦断した台風24号により大きな被害を受けることとなった。さらに、9月の北海道胆振東部地震は甚大な人的被害とともに、日本最初のブラックアウトを引き起こし、北海道経済は大きな打撃を受けた。被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに1日も早い復興を願わずにはいられない。

 さて、世界経済をみると「米国第一主義」を掲げるトランプ政権と、中国や欧州など世界の主要国との政治・経済摩擦が顕著となり、さらに中東や北朝鮮情勢に起因する地政学リスクは、株式や原油価格の乱高下をもたらしている。

 また、12月に発生したフランスでの反マクロン政権に対するデモの暴徒化はポピュリズムの危うさを裏付けており、これらの混乱が世界経済の下振れを引き起こすことを危惧している。特に、米中の貿易摩擦は単に2国間だけの問題ではなく、サプライチェーンが繋がる各国に影響が出てきており、スマートフォン関連分野や自動車販売についても陰りが出始めてきている。

 一方で、国内に目を転じれば、今年10月の消費税率引き上げに伴う消費の冷え込みが懸念されるものの、消費税実施前の駆け込み需要や、来年の東京オリンピック・パラリンピックの準備も佳境に入り、これに伴う需要拡大も見込まれるところだ。

 こうした中、国内の石油化学業界の状況は、底堅い国内需要にも支えられ比較的堅調に推移している。特に、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降60カ月連続で90%超を維持しており、ここ3年では、ほぼ九五%を超えている状況だ(昨年十一月までの実績)。

 しかしながら、設備の高稼働が継続しているときこそ、安定供給責任を果たすため、これまで以上に保安・安全の確保が重要となってきており、また、エチレン装置の高経年化が確実に進展する中で国際競争力を維持・向上していくためには、これまで以上に様々な努力を傾注していくことが不可欠となっている。

 石油化学産業は、日本の「ものづくり」におけるサプライチェーンの出発点であるとともに、自動車・電機などの分野での先端技術開発に不可欠な機能性素材を創出している。つまり石油化学産業の強化は、日本の「ものづくり」の強化につながるため、会員各社とともにその自覚と誇りをもって事業の発展、競争力の強化に取り組んでいるところだ。

 このような状況下、当協会としては石油化学業界の持続的発展に向け、①保安・安全の確保(経営層の強い関与、安全文化の醸成、IoT・AIの活用、産業保安に関する行動計画の策定)②事業環境の基盤整備(イコールフッティング、定期修理工事の課題などに関する検討)③グローバル化対応の強化(アジア石油化学工業会議、環境問題、海外の情報収集など)といった諸課題に積極的に取り組んでいく。