エア・ウォーター 熱膨張性黒鉛事業、合弁会社化で成長

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2020年6月2日

 エア・ウォーターはこのほど、これまで単独で事業運営を行ってきた熱膨張性黒鉛(TEG)事業を、同社と東洋炭素および南海化学の3社の合弁事業とするために合弁会社を設立した。

 TEGは、天然の鱗片状黒鉛を硫酸によって層間化合物処理することで熱膨張特性を与えた特殊黒鉛製品であり、国内では唯一、エア・ウォーターが製造を行っている。加熱によって膨張することから、様々な形状に圧縮成形することが容易であり、熱や腐食に強く、気密性の高い素材として、自動車用エンジンガスケットや化学プラント用パッキンなどのシール部品材料として使用されている。

 また、膨張前のTEGをゴムや樹脂などの可燃性物質に混ぜておくと、火災時に膨張して断熱層を形成し、燃焼が広がるのを抑制する効果があることから、建築用断熱材や航空機用シートの難燃剤としても使用されている。

 同社は日本製鉄和歌山製鉄所構内でTEGを製造しているが、生産体制の効率化と新用途の開発が事業成長の課題であった。こうした中、製造技術とノウハウを持つエア・ウォーター、TEGの最大ユーザーであり豊富な技術とノウハウを持つ東洋炭素、製造に不可欠な廃酸リサイクル処理設備を持つ南海化学の3社が合弁会社を設立。緊密に連携することによって、これらの課題を解決し、TEG事業のさらなる成長を図る。

 今後、合弁新会社は、2022年4月の完成を目途に和歌山市内に新工場を建設する予定で、コスト競争力と安定供給力を備えた生産体制を構築し、放熱材などの電子材料分野をはじめとした用途開発に取り組む考えだ。