国内のエチレンセンター 昨年もほぼフル稼働

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2020年1月9日

内需は堅調も、アジア市場変調で先行き不透明

 国内のエチレンセンターの稼働率は、2019年1~11月平均で95.4%となっており、通年でもほぼフル稼働となったようだ。仮にこのペースを維持すれば、昨年のエチレン生産量は、640万t程度(2018年は615万6000t)と想定される。

 その背景として、汎用樹脂を中心に国内需要が堅調さを維持していることに加え、輸出量が2018年から回復したことが挙げられる。生産量に占めるエチレン輸出の割合は、10月までの平均で10.9%と、2016、17年並みで推移した。アジアのスポット市況は軟化傾向にあるが、長期契約を結んでいる顧客向けに輸出されていたと見られる。

 一方、2019年は、フル稼働の目安とされる95%稼働を下回った月が、11月までで6月(94.9%)、8月(93.8%)、9月(93.2%)、10月(94.6%)の4回となった。2018年は、29カ月ぶりに95%割れとなった7月を含め2回だったが、昨年はさらに増加したことになる。稼働率は高水準を維持しているものの、これまでとは潮目が変わりつつあると言えるだろう。

 2020年についても、アジア市場が変調しており、先行き不透明な状況だ。内需はオリンピック景気もあり引き続き堅調に推移すると見られるが、アジアでは中国景気が減速する中、石化の大型設備が稼働を開始するなど供給に余剰感が強まっている。特にポリエチレン(PE)は、米国シェール由来品や中東品などの流入が加速しており、需給バランス悪化に拍車を掛けるとの見方が強い。

 さらに、昨年サウジアラビアの石油施設が攻撃されたことを契機に、ナフサ価格が上昇傾向にあることも懸念材料。これらの要因で石化製品のスプレッド悪化が進む可能性もあり、今後、減産の動きが出てくるとの指摘もある。こうした状況下、わが国エチレンセンターが2020年の年間を通して高稼働を維持できるか注目される。