積水化学 ごみをエタノールにする技術を事業化へ

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2020年4月20日

INCJと合弁、持続可能な社会の創生に貢献

 積水化学工業は、ESG経営を最重要課題に掲げ、社会・環境問題の解決に注力している。中でも、廃プラスチックを含む可燃性ごみを都市油田に変える「ごみの資源化」を重要なテーマの1つとして取り組んでおり、次世代に豊かな社会を引き継ぐため、化石資源に頼らない究極の資源循環社会システムの創生を目指している。

 2017年には、米ベンチャー企業ランザテック社と共同開発した、世界初の革新的生産技術「BR(バイオリファイナリー)エタノール技術」を確立。生ごみ、衣類、プラ、紙・木材などの可燃性ごみを、分別することなくガス化し、熱・圧力を用いることなく微生物によりエタノールに変換することができる。

 同社は、同技術の実用化と事業化に向け、環境省委託事業(二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業)などを活用し、各自治体や関連企業などのパートナー募集やビジネスモデルの検討を進めてきた。

 こうした中、今月16日に、BRエタノール技術の実証事業の実施や事業展開を行うことを目的に、経済産業省が所管とする官民ファンド「INCJ」と合弁会社「積水バイオリファイナリー」の設立を発表。岩手県久慈市に実証プラントを新設し、2021年度末に稼働させ実証事業(エタノール供給)をスタートする。

 まず標準的規模のごみ処理施設の処理量の10分の1程度のごみ(1日約20t)の提供を受け、エタノールを生産。そして自治体、ごみ処理関連企業、プラントメーカーなどのパートナーを広く募り、生産したエタノールを様々な製品・事業へ活用する検証を行い、2025年度には本格事業化を目指していく計画だ。

 日本で排出される可燃性ごみは年間約6000万tと見られている。国内でのプラスチック生産に用いられる化石資源のほぼ2倍に及ぶが、ほとんどが再利用されず焼却・埋め立て処分されている状況。また、プラスチックは、私たちの生活には欠かせないものの、海洋プラスチック問題などがクローズアップされており、使用済みプラスチックの再活用が求められている。

 同技術の事業化や事業拡大、社会への普及のためには、原料となる廃棄物関連の行政を所管する自治体や、民間企業などのパートナーとの強固な連携が欠かせない。積水化学は、INCJの協力を得て、自治体やごみ処理関連企業、プラントメーカー、エタノールを利用する企業などと強い協力関係を構築するとともに、関連省庁との協議や連携なども円滑に進めることを期待している。

 両社は、合弁会社「積水バイオリファイナリー」を通じて、日本各地の地方貢献や、カーボンリサイクルを通じたサーキュラーエコノミーの実現により社会課題解決に寄与するとともに、持続可能な社会の創生に貢献していく考えだ。

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