王子HD 生分解性プラやバリア性紙製品などの開発加速

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2018年10月9日

 王子ホールディングスは、地球環境に配慮した生分解性プラスチックと、さらなる機能を加えた紙製品の開発を加速する。

 最近、EUが海洋生物保護のため、使い捨てプラ製品の使用を禁止する法案を提出し、米国大手外食チェーンが相次ぎプラ製容器やストローを見直す計画を出すなど、世界でプラスチックに替わる製品の需要が高まっている。

 同社グループはこれまで、飲料やヨーグルト・アイスクリームなどの容器、ファストフード店で利用される耐油機能を備えた容器・包装紙など、食品用途向けの各種原紙を製造してきたが、今回、イノベーション推進本部パッケージング推進センター(今年4月設置)を中心に、プラスチックに替わる、生分解性プラとさらなる機能を備えた紙製品の開発を進めていく。

 生分解性プラの開発は、王子エフテックスで、パルプを生分解性プラであるポリ乳酸と複合化した樹脂ペレットの開発を推進。パルプを複合化することで成形品の剛性が向上、耐熱性(熱変形温度)も改善され、射出成型時間の短縮、成形品の用途の拡大が期待されており、現在ユーザーへのサンプル提供を開始している。

 従来、生分解性プラ原料に使用される糖液(グルコース)は、主にサトウキビやトウモロコシなどの可食原料から製造されているが、同社グループではバイオエタノール製造で培った要素技術(酵素回収、連続製造)を応用し、非可食原料の木材(セルロース)から糖液を効率的に製造する技術を開発。今後、糖液の量産体制を整備するとともに、将来的には生分解性プラの自社開発、または提携による開発を目指していく。

 一方、さらなる機能を備えた紙製品の開発では、主にプラスチックが使用されているバリア性を有する包装材料を紙に置き換えるために、再生循環型の包装材料を開発した。同開発品は水蒸気と酸素の両方に対してバリア性を持つマルチバリア紙であり、紙単体で水蒸気に対しては一般のバリアフィルム並み、酸素に対しては蒸着フィルム並みの高いバリア性能が得られている。

 また、紙コップふた(トラベラーリッド)についても、プラスチックふたが主流となっていることから、生分解性のある再生可能な「パルプ」を原料とした紙製のふたを開発。同開発品は、耐水性、耐熱性を持っており、ホット用・アイス用の紙コップのふたとして使用可能だ。

 さらに、王子エフテックスでは、紙製ストロー原紙として使用可能なサンプル提供を開始。耐水性を有し、スパイラル加工による紙ストローの製造に適している。