高エネ研など 結晶構造の自動解析精度、熟練者超え

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2020年7月13日

 高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)と総合研究大学院大学、産業技術総合研究所(産総研)は共同で、数理最適化の一手法であるブラックボックス最適化手法を用いて、物質・材料研究に必要不可欠な粉末X線回折(PXRD)パターンの解析を自動化・高効率化する手法を開発した。これにより、熟練者を超える解析精度と解析速度だけでなく、従来の手法では得られない結晶構造候補の発見も可能になった。

 物質・材料の機能と性質の多くは結晶構造で決まるため、その詳細な解析は、様々な物理現象研究や高機能材料開発の出発点となる。最も広く利用されている分析手法は、PXRD法だ。その測定結果には結晶構造情報以外のパラメータも多く含まれるため、結晶構造解析のためのパラメータ調整(リートベルト精密化法、仮定した結晶構造から計算した回折パターンと実測パターンが一致するようにパラメータを調整)には膨大は労力を要し、人的・時間的コストが問題となる。熟練者でも1日に1件であり、データ解析の自動化や効率化が求められている。

 今回、リートベルト精密化法が機械学習のハイパーパラメータ最適化問題(複数のパラメータ設定の最適化)と類似していることに着目。これに有効なブラックボックス最適化手法(アルゴリズム)をリートベルト精密化法に応用して、PXRDパターン解析を効率化する手法を開発した。これにより、熟練者を超えるフィッティング精度、つまり測定データとシミュレーション結果の高い一致精度がありながら、ノートPC使用で1時間程度にまで時間を短縮。また、従来からの熟練者の典型的な手順では到達できなかった結晶構造の候補を発見することにも成功した。

 この手法により、結晶構造解析のほか、電子顕微鏡、X線顕微鏡、X線吸収微細構造(XAFS)など様々な計測機器によるデータ解析の自動化が可能となり、計測と解析とを統合した計測機器開発に活用されると考えられる。そして、物質・材料の研究現場でのハイスループットで高精度な材料データを取得するという課題を解決し、世界最先端の研究開発プラットフォームが構築されることが期待される。