産総研 プラスチック劣化を近赤外光測定で非破壊診断

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2020年8月21日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、近赤外光でプラスチックの劣化を診断する技術を開発した。自動車や建築などに汎用されるポリプロピレン(PP)の劣化を、非破壊によるその場で診断が可能。製品内で使用中のPP部品の品質や劣化の診断、部品製造ラインでの異常品検出、マテリアルリサイクル時のプラスチック部品の選別などへの利用が期待される。

 品質検査には引張変形試験が広く用いられる。機械特性の重要指標の1つ「破断伸び率」は、試料が破断するまでの引張り伸び率で、劣化が進むと低下する。しかし測定対象は変形・破壊するため使用中の部品は診断できず、それに代わる非破壊診断技術もなかった。

 今回、劣化度が異なるPP試料の近赤外光吸収スペクトルと破断伸び率を計測し、これらを学習データとしたAIデータ解析により、吸収スペクトルの変化から劣化を推定した。破断伸び率の算出値は引張試験実測値とよく一致した。

 さらに、PPの固体構造の変化と近赤外光吸収の変化が直接的に相関することも確認した。多量の添加剤を含んだPPや他のプラスチックの劣化診断も、対象物の近赤外スペクトルや破断伸びなどを測定し機械学習することで適応可能。材料を破壊することなく、数秒間の赤外光吸収測定による破断伸び率の高精度の推定を実現した。非破壊・リアルタイムのプラスチック製品の品質評価に利用することで、製造コストの削減が期待される。

 今後は自動車部品、建設資材の品質管理やプラスチック部品のリサイクルに適用するため、企業への橋渡しを積極的に行う。また「材料診断プラットフォーム」では複数の診断技術を統合し、「材料の総合病院」として、企業からの診断依頼に幅広く対応していく考えだ。