NEDO 航空機エンジン向け合金開発と材料DBの構築

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2021年6月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、航空機エンジン用国産材料の競争力強化に向け、革新的な合金開発と材料データベースの構築を行う2件の研究開発事業に着手した。

 CO2排出量削減に向け、低燃費・高性能の航空機が求められている。その中で、航空機エンジンには高い安全性や品質保証体系、航空当局の認証管理などが要求されることから、欧米企業を中心とした寡占状態にある。日本の航空機エンジン産業は国際共同開発への参画を通じて事業規模を拡大してきたが、さらなる拡大には技術革新による優位性を維持し、設計段階から開発に携わる戦略的パートナーとなることが不可欠だ。

 今回、航空機エンジン用材料開発のための「革新的合金探索手法の開発」と、国産材料の競争力強化のための「航空機エンジン用評価システム基盤整備」事業に着手。高温・高圧環境に耐え、軽量で耐熱性、耐摩耗性、熱伝導性、導電性などに優れる合金の開発には、金属元素の組み合わせとプロセス条件決定のための膨大な実験が必要で、天文学的な時間がかかる。そこで合金探索に必要な良質のデータを大量かつ高速に収集し、マテリアルズ・インフォマティクスによるデータ駆動型合金探索手法を開発し、航空機エンジンへの適用可能性を模索する。

 一方、航空機エンジンには材料段階から厳しい認証基準などがある。国産材料の競争力を高め、材料データを効率的に得るために、関連企業や研究機関などと連携してデータベースを整備し、それに基づいて実際に部材を製造し性能評価試験などを行う。

 参加企業・機関はJX金属、IHI、川崎重工業、三菱重工航空エンジン、本田技術研究所、三菱パワー、産業技術総合研究所、金属系材料研究開発センター、物質・材料研究機構、筑波大学で、プロジェックトリーダーは東京大学大学院工学系研究科の榎学教授が務める。新合金を開発し、認証取得に必要なデータベースを構築し、航空機エンジンへの適用と日本の航空機エンジン産業の国際競争力強化を目指す。新合金による軽量化とエンジン高効率化による燃費改善で、2040年に約93万tのCO2排出量削減が期待される。

日鉄ケミカル&マテリアルなど 海藻を製鉄で多角的利用、技術開発に着手

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2021年5月26日

 日鉄ケミカル&マテリアル、日本製鉄、金属系材料研究開発センターは25日、共同で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ブルーカーボン(海洋生態系における炭素貯留)追及を目指したサプライチェーン構築に係る技術開発」に採択されたと発表した。マリンバイオマス(海藻)の多角的製鉄利用に資する技術開発に着手する。

 昨今、気候変動対策としてCO2削減の重要度が増しており、カーボンニュートラル(CN)社会の実現は世界的な潮流となっている。日本でも昨年12月に「2050年CN、脱炭素社会の実現を目指す」ことが閣議決定され、革新的技術の実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進する方針が示された。具体的な戦略として、経済産業省から「革新的環境イノベーション戦略」が提示され、その中に「ブルーカーボンの追及」が明記されている。こうした中、NEDOは、ブルーカーボン追及を目指したサプライチェーン構築に係る技術開発事業への取り組みを開始し、3者は技術開発事業の委託先として採択された。

 日本は古くから海藻養殖が盛んであり、世界トップレベルの技術・ノウハウを保有している。また、長い海岸線に恵まれていることからもブルーカーボンに関する技術開発は温暖化対策・産業育成の両面で有効と考えられている。こうした背景を受け、同事業では臨海製鉄所という地の利を生かして、CN材であるマリンバイオマス(海藻)を生産し、それを製鉄プロセスの中で利用する「バイオマスの地産地消」といった新たなサプライチェーンの構築を目指していく。

 マリンバイオマスの利用については、製鉄プロセスで利用される炭素源(炭材や炭素材料)としての活用を検討。生産については、製鉄プロセスで発生する鉄鋼スラグを利用した藻場造成で培った技術を活かして、海藻の積極的な育種に取り組む。マリンバイオマスのCN材としての検討は、世界に例がない研究となる。

 同事業では、こうした要素技術の開発とともに、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性検討を行い、実証段階への道筋を作ることを目指す。

NEDOなど ヒートポンプ効果の定量評価で導入を促進

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2020年10月5日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)、早稲田大学、金属系材料研究開発センター、前川製作所はこのほど、産業用ヒートポンプの導入効果を定量評価できる「産業用ヒートポンプシミュレーター」を開発した。簡単な入力と操作で、導入後の1次エネルギー消費量とCO2排出量を短時間で高精度に試算できる。

 日本は化石燃料などの1次エネルギーの9割は輸入であり、経済的・温室効果ガス排出抑制・エネルギーセキュリティー維持の観点から運輸・民生・産業分野の省エネルギーが求められる。しかし、産業分野の多くは高温燃焼や蒸気ボイラーの熱を利用するため、多量の化石燃料を消費し温室効果ガスを排出。しかもその熱エネルギーの1部は使用されずに排熱(未利用熱)として廃棄されている。

 NEDOとTherMATは「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」事業で、2022年度を目標に100℃弱の回収熱からエネルギー消費効率(COP)3.5以上で最高200℃の熱供給が可能な、産業用高効率高温ヒートポンプの開発を進めている。

 一方、産業用ヒートポンプ導入のための効果評価には、生産プロセスに適したヒートポンプと運転条件の選定、COP算定のための蒸気・温水温度、熱源機器のエネルギー使用量の詳細な計測データに加え、ヒートポンプの試験データが必要になり、導入検討のための多大な時間とコストが障壁となっていた。

 今回開発した「産業用ヒートポンプシミュレーター」は、想定する利用方法を選択し、冷媒の種類や定格加熱能力、時刻ごとの給水温度や流量を入力すれば、ヒートポンプのCOP、加熱能力、1次エネルギー消費量、CO2排出量を短時間で高精度に試算でき、時間とコストを大幅に節減する。

 今後、同シミュレーターで産業用ヒートポンプの導入効果を具体的に示すことで、未利用熱の有効活用を推進し、徹底的な省エネルギー化と地球温暖化防止へ貢献する。またポンプ・タンク・弁など生産プロセス全体の設計やエンジニアリングを可能にする「産業用ヒートポンプ導入支援ツール」へと高度化し、広く活用できるよう一般公開と標準化を目指す考えだ。