産総研 大気中の希薄CO2のメタン直接合成触媒を開発

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2021年3月16日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、100㏙から数十%の濃度範囲のCO2から分離回収処理無しで直接高濃度メタンを合成する技術をデルフト工科大学と開発したと発表した。

 カーボンニュートラルの実現に向け、発電所や産業分野から排出されるCO2の大幅削減と、排出されたCO2を回収し炭化水素系燃料や炭素含有有用化合物へ転換して有効利用する研究開発が精力的に進められている。さらにネガティブエミッション技術の導入に向け、大気中のCO2を回収する直接空気回収も注目される。

 CO2濃度は産業排出ガス中で数~数十%、大気中で約400㏙と希薄なため、100%近くまで濃縮するための分離回収過程では多くのエネルギーとコストがかかり、高効率化や分離回収不要の革新的プロセスが求められる。今回、CO2吸収とそれをメタンに転換する二元機能触媒を開発したことで、100㏙のCO2からでも最大1000倍以上高濃度のメタンを直接合成することが可能となった。この触媒はCO2回収機能をもつアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)やアルカリ土類金属(カルシウムなど)と、CO2と水素をメタンに転換する機能をもつニッケルを組み合わせたものだ。

 産業分野からの排出濃度を想定した5~13%と、大気を想定した400㏙、さらに希薄な100㏙のCO2濃度条件で、450℃の固定層反応器で試験を行った。CO2濃度100㏙のガスを反応器に流すとCO2だけが選択的に吸収され、40分後に吸収が飽和し始めるまで反応器出口からのCO2排出はなかった。その後反応器に水素を導入するとメタンが迅速に生成し、最大で体積分率1000倍以上高濃度のメタンに転換した。転化率は90%以上であった。さらに、大気中の酸素による触媒劣化を確認するために酸素を含むCO2ガスでの試験も行ったが、若干の性能低下はあるものの、CO2の回収とメタンへの高効率転換が確認できた。

 今後は、触媒重量当たりのCO2回収量とメタン生成量がさらに高い二元機能触媒の開発を目指すとともに、実用化を目指した高効率な反応プロセスの開発を行う。