中国需要が回復せず、稼働調整でスプレッド確保
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、中国の需要が盛り上がりを欠いていることから、アジアのスポット市況が低水準で推移している。
昨年12月末のスポット市況は
2024年1月26日
2023年6月23日
2023年2月20日
行動制限の解除で実需が増加、期待先行の一面も
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、アジア市況が底を打ち、春節休暇以降から上昇基調にある。2月上旬のスポット市況はモノメリック2275ドル、ポリメリックが1950ドルとなり、大きく落ち込んだ12月からモノメリックで275ドル程度、ポリメリックで35ドル程度も上昇している状況だ。
中国では、行動制限解除の混乱が落ち着き、春節休暇明けから経済活動が活発化しつつある。ウレタン製品の実需も増加しており、MDIの引き合いが戻ってきている。ただ、需要が本格化してくるには時間がかかると見られ、市況の上昇は期待先行という一面もあるようだ。
昨年のMDIは、中国ロックダウンの影響により4月以降から市況が下落基調となった。特に、秋以降には、中国政府がゼロコロナ政策を一段と強化したことが重荷となり、スパンデックス(弾性繊維)や靴底といった幅広い用途で使用されるモノメリックの需要が低迷。不動産問題の長期化で、住宅や冷蔵庫の断熱材用途で使用されるポリメリックも需要が盛り上がらず、需給バランスが大きく崩れた。中国に設備を構える海外大手メーカーは、採算重視の姿勢から、稼働調整や新設の稼働を遅らせるなど対応を図ったものの、市況の下落が継続。さらに、12月に入り政府が行動制限を解除したことが、コロナ感染者の急拡大を招き、中国経済が大きく混乱した。これを受けて、MDI市況はモノメリックが2000ドル割れ、ポリメリックが1600ドルを割り込む結果となっている。
こうした中、年明けから徐々にコロナ禍の混乱が落ち着いたことで、中国経済の回復への期待が高まっている。春節休暇の旅行者も3億人超と2019年の90%の水準にまで戻るなど、人やモノの動きが活発化し、需要の回復を見据えて工場の稼働が上がっているようだ。ただ、『モノメリックは日用品など実需の要素が大きいが、ポリメリックは期待先行の面がある』(大手メーカー)との指摘もあり、不動産問題が解決しない限りポリメリックが足を引っ張り、MDI市況の上値が重くなることも想定される。
国内大手メーカーである東ソーは、MDIを生産する南陽事業所、スプリッター拠点である中国・瑞安工場ともフル稼働を継続しているが、交易条件の悪化や原燃料価格の高騰により収益が大きく圧迫され、今年度のクロール・アルカリ事業は営業赤字を見込む。ただ、年明けから中国市場が持ち直してきたことに加え、高騰していた石炭価格が急落するなど事業環境の潮目が変わりつつあることから、第3四半期の決算発表では、業績予想を据え置いた。今後、春にかけて海外大手メーカー定修が予定されており、想定以上に需要が出てくれば市況が押し上げられる可能性もあり、今後の市場動向が注目される。
2022年10月6日
2022年3月16日
2021年12月16日
定修でタイト継続、年明けは中国市場の動向次第
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、中国において電力規制による稼働低下でスポット市況は上昇基調を強めていたが、国慶節明けに電力規制が緩和されてきたことで頭打ち感が出てきている。しかし、中国大手メーカーが大型定修に入ったことや、欧米などから域外品が入ってこないこともあり、スポット市況は年内までは高水準を維持する見通しだ。
こうした中、MDIで併産されるモノメリックとポリメリックで、値動きに違いが出てきている。モノメリックはスパンデックスなどの堅調な需要が続く中、
2021年9月16日
2021年6月25日
2021年3月17日
米国寒波で複数プラントが停止、需給がタイト化
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、2月に米国で発生した寒波によるプラント停止の影響が波及し、アジアのスポット市況が急騰している。足元の市況はモノメリック3400ドル/t、ポリメリック3300ドル/tとなっており、特にポリメリックはトラブル要因などで高騰した昨年11月の水準以上になっている状況だ。
MDIは昨年、コロナ禍の影響を受けた4-6月期の需要は大きく減退したものの、中国の経済活動の再開に伴い、年後半には回復傾向を強めた。こうした中、大手メーカーの稼働調整や定修要因に加え、欧米メーカーにトラブルが発生したことにより、秋には需給バランスが一気にタイト化。低迷していた市況が、11月には、モノメリックで3500ドル/t、ポリメリックは2700ドル/tにまで急騰した。その後、定修やトラブルといった要因が解消されたことで、1月にかけて市況は弱含みとなった。
しかし、2月に入り、石油・石化プラントが集積しているテキサス州やルイジアナ州に大寒波が襲来。停電や断水などが発生したことで各社のプラントも停止を余儀なくされ、MDIメーカーも供給が困難になったことからフォースマジュールを宣言した。この事態を受け、中東メーカーなどがアジアに輸出していた玉を欧米地域に振り替えたため、アジア市場が再びタイト化しスポット市況が急騰する結果となっている。また今回は、断熱用途などに使用されるポリメリックが騰勢を強めた。MDIはモノメリックとポリメリックが併産されるが、保存期間が短いモノメリック見合いの生産となる。そのため、供給不足を懸念した需要家がポリメリックを買い増しているようだ。
一方、原料ベンゼンとのスプレッドは拡大傾向にある。ベンゼンも年明けから上昇基調となり、3月のアジア価格(ACP)は、前月比95ドル高の855ドル/tとなった。これを踏まえたスプレッドは、モノメリックで2500ドル程度、ポリメリックで2400ドル程度となり、4-12月期(モノメリック1300ドル程度、ポリメリック1100ドル程度)に比べ大幅な改善となる。MDIメーカーにとっては、想定以上に収益が改善していると言えるだろう。
今後についても、しばらく市況が崩れるとの見方は少ない。寒波影響によるFM宣言は解除されてくるものの、正常稼働に戻るまでには時間が掛かることに加え、中国では春の需要期を迎えることから、需給タイトが続く見通し。とはいえ、MDIの各メーカーが稼働を高めてくる可能性や、コロナの状況次第では需要が落ち込むことも想定される。近年、MDI市況は外部環境によって変調しやすくなっており、今後の市場動向に注目が集まりそうだ。
2020年12月16日
足元ではやや弱含み、来年以降の市場動向注目
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、一時期のタイト感が緩和されつつあるものの、好環境を継続。足元の市況はモノメリックが3400ドル/t、ポリメリックが2500~2600ドル/tとなっており、依然として高水準を維持している状況だ。
MDIは上期(4-9月期)に、コロナ禍の影響により需要が大きく減退し市況も低迷していた。しかし、コロナ禍から脱した中国で需要が急回復する中、欧米メーカーにトラブルが発生し、需給バランスが一気にタイト化。市況は上昇基調を強め、11月中旬には、モノメリックで3500~3600ドル/t、ポリメリックは2700ドル/tとなった。その後、海外でのトラブル解消や、アジア地域の定修が明けてくることもあり、市況はやや軟化傾向となっている。
こうした中、MDIのスプレッドも大きく改善している。原料であるベンゼン価格(ACP)は、3Q(7-9月期)平均で436.7ドル/t、4Q平均で486.7ドル/tと上昇し、2Q(4-6月期)の急落(平均358.3ドル/t)から回復基調を強めている。ただ、MDI市況の上昇ペースが大きく上回っているため、12月のACP(575ドル/t)で換算した足元のスプレッドは、モノメリックで2800ドル/t程度、ポリメリックで1900ドル/t程度と、上期(モノメリック1000ドル/t程度、ポリメリック750ドル/t程度)に比べ大幅に伸長している。特にモノメリックは10月からスプレッドがさらに拡大しており、MDIメーカーにとって想定以上に収益に貢献している状況だ。
今後については、しばらく市況が大きく崩れるとの見方は少ない。その要因として、トラブルが発生した欧米メーカーの生産が完全に戻っていないことに加え、経済活動の再開に伴い自動車用途をはじめ堅調な需要が続いていることが挙げられる。ただ、中国において住宅向け断熱材用途は冬の不需要期に入っていくことや、欧米などではコロナ禍が再拡大しており経済が冷え込むことが懸念材料。近年、MDI市況は外部環境によって乱高下しやすい状況が続いており、来年1Q(1-3月期)の市場動向が注目される。