【夏季特集】わが国化学産業、世界経済の変調で事業環境が一変

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2022年8月10日

脱炭素化も急務の課題、新たな挑戦で成長を実現

 わが国化学産業は、好業績となった昨年度から一転して、事業環境に暗雲が立ち込めている。ウクライナ問題を背景に原油価格が高止まりし、原燃料価格の高騰や物流費などのコストアップが収益を圧迫してきた。また中国では、ゼロコロナ政策の強化により景気が悪化。巣ごもり需要で好調だった半導体メモリやディスプレイ材料などでは在庫調整の動きも出始め、自動車生産も半導体不足の影響から計画の見直しが進む。

 こうした最終製品の需要低迷が素材分野に及び、わが国エチレン稼働率は8年7ヵ月ぶりに90%台を2ヵ月連続で割り込む事態となった。各社は、価格是正やコストダウンに取り組むなど、変動への耐性が問われる1年となっている。

 一方、化石資源がひっ迫しているものの、将来に向けた脱炭素化も急務の課題だ。環境に貢献する技術開発では、業界を超えたアライアンスや、NEDO事業などに参画する動きが活発化している。装置産業にとって脱炭素はハードルが高いものの、この転換期を乗り越え、いかにビジネスにつなげるかが、生き残りを図るカギになってくる。

 今回の特集では、既存事業の強化とともに、新たな分野にどう挑戦して企業成長を実現していくのか、業界を代表する方々に話を聞いた。

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◇インタビュー◇

三菱ケミカルグループ 代表執行役EVP 福田信夫氏
 ▽物流・サプライチェーン改革を推進、DXで可視化し最適化へ

旭化成 社長 工藤幸四郎氏
 ▽アニマルスピリットを覚醒、積極的に挑戦し道を切り拓く

三井化学 社長 橋本 修氏
 ▽社会課題解決にソリューションを提供、CVCで新事業創出へ

昭和電工 社長 髙橋秀仁氏
 ▽来年1月に統合新会社が発足、新社名と新体制で共創を実現

東ソー 社長 桒田 守氏
 ▽ハイブリッド経営で着実な成長、環境貢献と企業成長に挑む

JSR 社長兼COO 川橋信夫氏
 ▽成長投資を継続、技術力を強化し最先端分野を切り拓く

プライムポリマー 社長 藤本健介氏
 ▽ポリオレフィンは差別化に注力、MRとバイオマスで環境貢献

PSジャパン 社長 室園康博氏
 ▽長期ビジョンでは利益を追求、CR設備や環境製品開発に投資

【新社長インタビュー特集】 トップインタビュー

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2020年10月2日

わが国化学産業、コロナ影響拡大で厳しい局面に
トップの方針が重要、経営力で逆境を乗り越える

 わが国化学産業は、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速により、厳しい局面を迎えている。日本の4-6月期のGDPは年率ではマイナス28.1%となり、過去最大の落ち込みとなった。各国が経済活動を再開したことで、景気は回復に向かっているが、コロナ感染が再拡大する懸念が払拭できず、先行き不透明な状況にある。企業トップは目指すべき方向をしっかり示し、経営力で逆境を乗り越えていかなければならないだろう。

 コロナ禍により、事業環境も激変している。コモディティの分野では、原油価格の下落を背景に市況の低迷が続いており、高稼働を維持することが課題となっている。またスペシャリティの分野でも、5GやCASEといった成長市場に各社が参入しており、製品の差別化だけでなく価格競争も激化している。各社は生き残りを図るために、生産体制の最適化やコストダウン、またデジタル化への対応など、早急に手を打っていかなければならない。

 一方、環境問題への取り組みも大きなテーマだ。プラスチックごみの削減に社会の関心が集まるなど、サステナブルがキーワードとなっている。各社はプラスチックの有用性やリサイクル性を訴え、社会に対しソリューションを提供していく必要がある。

 今回の「新社長インタビュー特集」では、厳しい経済環境の中、いかに収益基盤を安定させ、将来への成長へとつなげていくか、今年度から就任した新社長の方々に抱負と今後の戦略を聞いた。

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積水化学工業 加藤敬太社長
 ▽業容倍増を目指し、今期は体力強化と経営基盤強化を図る

日鉄ケミカル&マテリアル 榮 敏治社長
 ▽機能材料を大きな柱に、選択と集中で経営資源を有効活用

ダウ・ケミカル日本 桜井恵理子社長
 ▽幅広いポートフォリオとネットワーク、イノベーションに貢献

テクノUMG 山脇一公社長
 ▽統合のシナジー効果を最大化、「飛躍」のステージへ導く

日本ポリエチレン 山田清隆社長
 ▽高付加価値化を推進、再投資できる収益体制を目指す

PSジャパン 室園康博社長
 ▽リーディングカンパニーを堅持、安心と価値を提供

新日本理化  三浦芳樹社長
 ▽マーケットインで、オンリーワンの技術と信用を届ける企業に

 

【新社長特集】PSジャパン 室園康博社長

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2020年10月2日

リーディングカンパニーを堅持、安心と価値を提供

 ━抱負をお聞かせください。

  PSジャパン 室園社長 中面当社は、国内ポリスチレン(PS)業界のリーディングカンパニーであると自負しており、業界の発展に貢献していくことが第一だと考えている。また、スチレン工業会の会長にも就任したが、PSを含めプラスチックがいかに有用なものであるのかを訴えていきたい。

 先日、私の娘から「プラスチックは世の中の役に立っているね」と初めて言われた。コロナ禍による「巣ごもり需要」で、テイクアウトやスーパーでの買い物の際に、プラスチックを使用するケースが増えたことで実感したのだろう。

 コロナ禍は事業環境の悪化をもたらしているが、逆にPSを再評価していただく良いきっかけになるかもしれない。そのためにはPSがリサイクルできる環境に優しい樹脂であることを広めていく必要がある。昔からPSはリサイクルに取り組んできたが、さらにリサイクル技術や回収システムをブラッシュアップしていかなければならない。

 ━リーディングカンパニーとして何に取り組んでいきますか。

 当社はリーディングカンパニーの地位を維持するために、シェアナンバーワン、品質ナンバーワン、高付加価値化を含めた技術開発ナンバーワン、環境対応ナンバーワン、といった4つの「ナンバーワン」を掲げている。

 PS業界は3社に集約されている中で、各社それぞれ得意分野で勝負をしている。シェアを維持するためには、

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