チッソはこのほど、「中期計画~業績改善のための計画」(2020~2024年度)を策定した。これは2019年度のJNC業績が目標利益を大きく下回ったことによる政府要請を重く受け止めたことが背景にある。水俣地域の経済・雇用などに最大限の配慮をしながら、これまで以上の徹底した自助努力により早期の収益回復と持続的な経営を両立させる考えだ。
前中期計画(2017~2021年度)では、「主力の液晶事業の急激な環境変化への対応の遅れ」、「ボラティリティの大きい液晶事業への過度な依存と第二の収益の柱が不在」、「赤字事業への抜本的な対応の遅れ」により計画未達かつ赤字事業が多く存在し、早急な対応が求められていた。これらを踏まえ、新中計では、構造改革の遂行による止血を最優先し、経常黒字を実現させることを主眼に置く。
計画の骨子として、①構造改革による業績改善:すでに決定している電子部品などの撤退に加え、赤字事業の縮小・撤退・役員報酬など削減継続、本社賃借面積の縮小といった全社のコスト削減による固定費負担の抑制
②Fit化推進による電力事業の収益拡大:五ヵ所の水力発電所(白川・内大臣川・津留・頭地・内谷)のFit化を推進し電力事業を将来の安定収益の基礎に
③ガバナンス強化:黒字化に向けた戦略・時期を明確化し、プロセス管理を徹底するとともに、戦略見直しのトリガーや未達時対応策を設定して赤字事業を見極め/モニタリング強化:成長土台となる毎期の安定経常利益・資金を確保するために、損益・資金モニタリングなどの内部管理体制強化、などを挙げた。
これらの施策により、2024年度のJNC連結経常利益55億円(2019年度は営業損失7億円)の回復を目指していく。なお、研究開発では、未来を変える新しい価値を発見し、社内外の技術を活用した価値創造のビジネスモデルを目指す。また設備投資は5年間で430億円を計画。資金状況に鑑み、維持更新投資のほかはFit化工事に注力する方針だ。