帝人ファーマはこのほど、日本で初めてうつ病の経頭蓋治療用磁気刺激装置として保険適用となった、「ニューロスターTMS治療装置」の販売を開始した。
米国の医療機器メーカーであるニューロネティクス社が開発したrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)装置で、2008年に米国で初めてうつ病の治療機器としてFDAの承認を受けた。その後、10年で約6万人のうつ病患者の治療実績がある。
帝人ファーマは2017年に、ニューロネティクス社と日本での同装置の独占販売契約を締結。上市に向けて準備を進めてきたが、1日に既存の抗うつ剤治療で充分な効果が認められない成人のうつ病患者に対し、日本で唯一、rTMS治療装置として保険が適用されたことから販売を開始した。
「ニューロスター」は頭部に当てた磁気コイルから、非侵襲的に「左背外側前頭前野」に磁気刺激を与え、神経伝達物質の放出を促すことで脳内を活性化させる。約40分の治療を週5回、計20~30回行うことで、うつ症状を軽減・消失する効果が期待できる。
主な副作用として、頭痛や治療部位の不快感などがあるが、一般的な抗うつ薬で見られるような全身的な副作用は発生しにくく、副作用により治療継続が困難な患者にとっても、新たな選択肢となることが期待される。
なお、同装置による治療の実施者には、日本精神神経学会が主催する「rTMS実施者講習会」と、帝人ファーマが主催する実技講習会の受講が求められる。
厚生労働省の患者調査などによると、国内のうつ病患者数は年々増加し、受診者で約73万人、未受診の潜在患者まで含めると250万人以上とされており、そのうち約3割が通常の抗うつ剤では症状が改善されにくいうつ病と言われている。
抗うつ剤治療で効果が不充分なうつ病に対しては、作用機序の異なる薬剤の併用や頭部に電流を流す「電気けいれん療法」が用いられるが、治療選択肢が限られていることから、より有効性・安全性の高い治療法のニーズが高まっていた。
帝人ファーマは、関連学会や専門医との連携により「ニューロスター」の適正使用の普及に取り組み、うつ病患者の症状の緩和とQOL(生活の質)の向上に貢献していく。