日本を代表する環境総合展示会「エコプロ2018」が、6~8日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。20回目を迎えた今回は、〝SDGs時代の環境と社会、そして未来へ〟をテーマに、企業、自治体、NPO、大学など538社・団体が参加、16万2000人超の来場者で賑わった。
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連総会で採択。環境問題をはじめとして世界が直面する課題に対し、2030年までに達成すべき17の目標を設定した。この大テーマの解決に向け、各業界・業種が打ち出す取り組みに特色が見られた。
食品業界は、容器の軽量化や、食品ロス低減を目的に個包装化、食べきりサイズへの少量化を進める。自動車メーカーは、塗装工程などを簡略化し、乾燥工程を減らすことでCO2排出削減を図る。玩具メーカーは、製造工程で出る不要部分を再利用したり、電動仕掛けを手動のおもちゃに改良する。資源回収についても、各業界で様々な取り組みが紹介されていた。そんな中、17の化学関連メーカー・工業会の出展をレポートした。
◆塩ビ工業・環境協会(VEC)
塩ビ工業・環境協会(VEC)は、塩化ビニル樹脂 (PVC)の特性やリサイクル有用性をクイズ形式で紹介した。
パイプやホース、食品サンプルや浮き輪などを展示し、PVCへの理解を多角的に訴求していた。展示品のバッグを手にした来場者は、「こんなところにも!」と、PVCの用途の広さ驚いていた。
◆クラレ
クラレは、「素材の力で食品ロスを削減」をテーマにした。世界で一年間に、食べられずに廃棄される食品は約13億/t。食品生産量の約3分の1に相当するという。
この問題に貢献するため、食品の賞味・消費期限を延ばすガスバリア材「エバール」や、バイオマス由来のガスバリア材「プランティック」などを出展した。
◆コスモエネルギーホールディングス
コスモエネルギーホールディングスは、「コスモ石油のエコは、私につながっている」をコンセプトに、石油が製品になるまでの過程を、原油、ナフサ、ガソリンなどの実物展示で紹介した。
石油掘削時に発生する随伴ガスを地中に戻す「ゼロフレアリングプロジェクト」への取り組みなどを展示した。
◆JXTGエネルギー
JXTGエネルギーは、来るべき水素社会をテーマにENEOSブースを出展。水素ステーションのモックアップの前で熱心に説明を受ける学生らは、燃料電池車への水素補給時の安全性などを質問していた。
JXTGホールディングスのグループ会社、JX石油開発やJX金属の環境保全活動もパネルで紹介した。
◆新日鐵住金グループ
新日鐵住金グループは、鉄を「つくるからリサイクル」までのライフサイクルを通して鉄の魅力を紹介した。
身近にあり暮らしを支える鉄か使われているものを、大画面に映し出されるイラストから探したり、鉄のリサイクル率が№1であることなどを、わかりやすく解説していた。
◆星光PMC
星光PMCは、セルロースナノファイバー(CNF)複合材「STARCEL」の製造プロセスなどを紹介。CNF強化樹脂を世界で初めて採用・商品化したランニングシューズの展示もあった。
同シューズのミッドソール部材の一部に「STARCEL」を使用することで、55%の軽量化となり、強度を20%、耐久性を7%向上させた。
◆積水化学グループ
積水化学グループは、「SEKISUIの歩み、それはSDGsそのもの」をテーマに、自然環境や社会環境の向上に貢献する、最新の製品・技術・コンセプトを幅広く展示した。
同社では、環境負荷を削減できる製品や事業を、独自の高い基準にしたがって「環境貢献製品」と定める取り組みを行っている。各種インフラシステム・素材から、軽量化に貢献する車載バッテリー周辺素材などを紹介した。
◆太平洋セメント
太平洋セメントは、ゴミのリサイクルでセメントを作っていることをPR。セメント製造時の1450℃という「高温焼成」工程を活用した、災害ゴミや産業廃棄物のリサイクル過程を紹介していた。
セメント1t当たり、400kの廃棄物や副産物を活用しているとのこと。強化プラスチックと金属の複合素材の分離・リサイクル技術も解説していた。
◆帝人グループ
帝人グループは、SDGs推進をPR。リサイクル素材でつくられたソーラーカーによる南極点到達プロジェクトへの支援活動、プラスチック海洋ごみ問題解決への取り組みなどを紹介した。
ソーラーカー支援は、同社の創立百周年を記念したプロジェクトの一環。車体や構造材向けの素材を提供している。鉄の11倍の強度をもつ高機能ポリエチレンテープ「エンデュマックス」を使用したロープで、チェーン状に巻き付けられたタイヤが展示されていた。
◆寺岡精工
寺岡精工は、ペットボトルの「ボトル to ボトル」循環型社会に貢献する、ペットボトル減容回収機「ボトル・スカッシュ」を展示した。
500mlボトル換算で150本収納できる従来型に加え、容量を3割増やし200本収納できる中型機を初披露した。現在設置中のコンビニだけでなく、スーパーや商業施設への展開を図る。
◆東洋紡
東洋紡は、「人にも地球にもやさしい技術『EE(イイ)。技術』」をテーマに、海水淡水化膜「ホロセップ」、排ガス中の粉塵を除去するバグフィルター用繊維、植物由来素材を一部に使用する「バイオプラーナ」などを展示した。
ブース担当者によれば、来場した小学生に一番人気は海水淡水化膜。また、開発中の100%バイオ樹脂の「PEFフィルム」は、数年後の商品化を目指したいとのことだった。
◆東レ
東レは、「サステナビリティ・ビジョン」に基づき、同社グループの革新技術・素材を「気候変動対策」「持続可能な循環型の資源利用と生産」「安全な水・空気」「医療の充実と公衆衛生の普及促進」の4テーマで展示した。
炭素繊維複合材料を紹介する「気候変動対策」のコーナーでは、イプシロンロケットの模型が目を引いた。モーターケース部分に「トレカプリプレグ」が使用されているとのこと。
◆ニチバン
ニチバンは、「みんなをつなぐセロテープ」をテーマに、70周年を迎えた主力製品「セロテープ」を前面に展示を行っていた。
同製品の主原料は木材パルプや天然ゴムといった天然素材であることをPRした。また、使用済み巻き芯のリサイクル活動などを紹介した。回収した巻き芯はダンボールに再生し、その収益を活用しフィリピンでのマングローブ植樹などを行っている。
◆日本ゼオン
日本ゼオンは、環境にやさしい発電デバイスの研究開発を目指す「プロジェクト・LNES(ルネス)」を出展した。
10cm角のソーラーカードで明かりを灯す展示を行った。デモンストレーションを行う、銀色に輝く大型キャンピングカーの内部は、夜の森を演出。ホタルのような静かなゆらぎで、やさしい光が点滅していた。
◆日本化学繊維協会
日本化学繊維協会は、繊維メーカー各社の環境対策製品などを展示。化学繊維は衣料・インテリア用途だけではなく、水や空気を浄化するフィルターや産業用途などもあることを紹介した。
また、ケミカルリサイクルや再生ポリエステル繊維などでの循環型社会への貢献度を訴求していた。
◆発泡スチロール協会
発泡スチロール協会は、発泡スチロールの省資源性、クッション性、断熱性、リサイクル性を実験とクイズで紹介した。
発泡スチロールを内張りした箱に、1mぐらいの高さから生卵を落とす実験では、来場者が割れない卵をいぶかしみ、「本当に生卵ですか」と、担当者に問う場面もあった。
◆三菱ケミカルホールディングス
三菱ケミカルホールディングスは、同社グループが提唱する「KAITEKI」をテーマに、三菱ケミカルからは環境負荷を低減する生分解性樹脂「BioPBS」、バイオエンプラ「DURABIO」や、車体軽量化で燃費向上に貢献する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、大陽日酸は、大気汚染に配慮した移動式水素ステーションをパネルなどで紹介した。