エボニックとシーメンス CO2原料の化学品製造を開始

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2020年11月19日

 エボニックインダストリーズとシーメンスエナジーはこのほど、CO2と水からスペシャルティケミカルを製造するテストプラントの稼働を開始したと発表した。

 「レティクス(Rheticus)Ⅰ、Ⅱ」プロジェクトは再生可能資源由来の電力と人工光合成技術を利用したエネルギー革命を目指し、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)から総額630万ユーロの助成を受けている。

 エボニックの最大拠点マールで稼働するテストプラントは、シーメンスエナジーのCO2/水電気分解装置とエボニックのバイオリアクターから成る。CO2と水をCOと水素に電気分解した後、微生物(バクテリア)を利用してプラスチックや栄養補助食品などの出発物質を製造する。このような人工光合成はエネルギー貯蔵庫の役割も果たし、炭素循環による大気中CO2の低減にも寄与する。今後数週間で合成ガスの組成、電気分解と発酵の相互作用の最適化を行い、高純度化学品製造のための液体処理ユニットを設置する。

 同プロジェクトの成功により、CO2から高付加価値スペシャルティケミカルや高エネルギー人工燃料などをモジュール方式で柔軟に生成できるプラットフォーム技術が実現する。A・カルリチェクBMBF大臣は「この最高水準の技術はドイツだけでなく世界中で実現する可能性があり、技術輸出を行う絶好のチャンスだ。効果的な地球環境保護の推進と、ドイツの強力な産業基盤の維持の両方を、このプロジェクトで実現できると確信している」と述べ、ドイツ連邦議会議員でグリーン水素担当の連邦委員を務めるS・カウフマン氏は「グリーン水素経済はイノベーション大国ドイツで革新的な技術が使われた場合のみ成功する。そのために必要な勇気と研究精神を、レティクスのプロジェクトパートナーは模範的に示している」と述べている。

 またエボニックのイノベーション担当のH・シュヴァーガー副会長は「化学産業のエネルギー転換ソリューションや開発なしに地球環境保護は不可能だ。政治的決定による供給安定性と信頼が、新しいものを生み出すフレームワークを設定する」と化石燃料の段階的廃止に関するスピードに警鐘を鳴らしている。