富士フイルムはこのほど、再生医療ベンチャーPuREC社(ピュレック:島根県出雲市)の第3者割当増資を引き受け、3億円を出資すると発表した。併せて、同社と再生医療製品の開発・製造受託に関する業務提携契約も締結した。
ピュレック社は、島根大学発の再生医療ベンチャーで、特殊な間葉系幹細胞(MSC)の作製技術を活用した再生医療製品の実用化に取り組んでいる。
MSCは、骨や脂肪などの細胞に分化する能力をもち、組織修復や免疫調整など多様な効果が期待されている幹細胞で、脳梗塞や軟骨損傷など様々な疾患での臨床応用が検討されている。
同大学医学部生命科学講座の松崎有未教授が開発した、骨髄由来のMSCは、超高純度ヒト骨髄幹細胞「REC(Rapidly Expanding Cells)」と呼ばれるもの。一般的なMSCと比べて、分化能や増殖能、炎症部位など特定の場所に細胞が集積する遊走能に優れる。
また従来の分離法では、MSC以外の細胞や老化した細胞が混在するなど、均一性に課題があったが、同社は2種類の抗体を用いて、骨髄より採取した細胞から分離・作製する手法などを用い、高純度の細胞集団が得られる分離培養法を確立した。
一方、富士フイルムは、日本初の再生医療製品を開発・上市した子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)や、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社FCDIを中核に、自社再生医療製品の研究開発を加速させている。
今回の資本・業務提携により、ピュレック社の「REC」の作製技術にアクセスするとともに、同社が研究開発を進めている、低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症を対象とした再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を獲得することになる。
さらに、ピュレック社から再生医療製品のプロセス開発や薬事コンサルティングなどをJ‐TECが受託することで、再生医療受託事業の拡大も図る。
富士フイルムは今後、幅広い製品開発で培い進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術、グループ企業の独自技術を活用して、再生医療の産業化に貢献していく。