プリンテッド・エレクトロニクス製造技術の開発やサービス提供を行うエレファンテックは、高速無電解めっきを活用したフレキシブル基板(FPC)に、基板上の配線となる銅膜の厚さが12㎛の厚膜タイプの「P-Flex PI」をラインアップに加え、15日から受注を開始した。銅膜厚を従来品と比べて4倍に厚くしたことで、高い電流値にも対応可能となることから、顧客ニーズへの適応力を高め、新たな市場開拓を図る考えだ。
同社のFPCは、インクジェット技術をベースにした独自製法「ピュアアディティブ法」で製造する。従来のエッチング法と異なり製造工程を大幅に簡略化できるため、エネルギーや水の使用量や廃棄物量の劇的な削減により、環境負荷が低い、試作や量産への柔軟な対応が可能、高いコスト競争力をもつといった特長を備える。ただその利点の反面で、高耐熱性のポリイミド基材に同製法を施した「P-Flex PI」の銅膜厚は標準仕様で3㎛と一般的なFPCに比べて薄く、用途によっては使用できないという課題があった。ユーザーからは「銅膜がもっと厚ければ、高い電流値に対応でき電圧降下も抑えられるため、適用範囲が広がる」との声も多かった。
同製法では樹脂製のフィルム基板上に銀をインクジェット印刷したのちに、無電解銅めっきを行う。この無電解銅めっきは、インクジェット印刷した銀が触媒として働くことで銀を印刷した部分にのみ銅が成長する仕組み。銀を印刷した部分に均一に成長する「均一性」、銀を印刷していない部分には成長しない「選択性」、高速に成長するための「高速性」の3つの要素が必要になる。これまで銅膜を厚く成長させること自体は研究レベルではできていたものの、量産レベルでは3要素をうまく調整することができず量産での供給は銅膜厚3㎛が限界だった。そこで印刷プロセスとめっきプロセスを同時に最適化し3要素のバランスを追求することにより、12㎛の銅膜厚を形成させながらも量産化に成功した。
今回開発した厚膜の「P-Flex PI」は、エレファンテックの大規模量産実証拠点「AMC名古屋」での生産を予定する。同拠点の現在の生産能力は月産2万㎡。厚膜タイプを加えラインアップを強化し、既存品と合わせでフル生産を目指す。なお、開発にあたっては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果の一部を活用した。