マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した材料開発を支援するAIスタートアップ、MI‐6(エムアイシックス)はこのほど、MI実験計画プラットフォーム「miHub」(エムアイハブ)を全面刷新し、提供を開始した。
今回新たに、研究開発組織での
2024年1月30日
2019年9月13日
慶應義塾大学と東京大学の研究グループはこのほど、実験主導型のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)により、リチウムイオン二次電池(LIB)の負極となる世界最高水準の性能をもつ有機材料の開発に成功した。
同研究では有機材料の新たな設計指針を確立するとともに、極めて少ない実験数で高容量・高耐久性の材料が得られる手法を示した。同開発は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「さきがけ」によるもの。
電池の省資源化に向けて、LIBの負極として金属を使わない有機材料が求められるが、従来は研究者の試行錯誤や経験と勘で探索されており、設計指針は明らかでなかった。
一方、MIは研究者の経験と勘の関与を減らすための手段だが、一般的に、大規模なデータ(ビッグデータ)に対して機械学習を行うため、実験科学者の小規模な自前データや経験知をどう活用するかに課題があった
。そこで、慶大理工学部の緒明佑哉准教授らの研究グループは、東大大学院新領域創成科学研究科の五十嵐康彦助教らと共同で、小規模でも比較的正確な実験データと実験科学者の経験と勘を融合した「実験主導型MI」の手法を探索した。
具体的には、まず16個の有機化合物について負極としての容量を実測し、容量を決定づけている少数の要因をスパースモデリングで抽出した。スパースモデリングとは、現象を説明する要因は少数(スパース)であるという仮定に基づき、適切な規範に従ってデータに含まれる主要因を抽出するデータ科学的手法の一つ。
この学習結果をもとに、抽出した因子を変数とした容量予測式(予測モデル)を構築。次に、市販の化合物の中から、研究者の経験と勘も交えながら、負極としてある程度の容量が見込まれる11個の化合物を選び、実験をする前に容量の予測値を算出した。
予測値の高かった3個の化合物について容量を実測すると、2個の化合物で高容量を示した。さらに、そのうちの1つであるチオフェン化合物を重合すると、容量・耐久性・高速充放電特性が向上した高分子の負極材料が得られた。
同研究では、少ない実験データ、研究者の経験と勘、機械学習を融合し、高性能な材料の探索に成功したことから、材料探索を効率化する上で、実験科学とMIの融合の有効性を明らかにした。また、今回確立した有機負極材料の設計指針により、さらなる性能向上や新物質の発見が期待されている。