積水化学工業は28日、メディカル事業の国内外主力2工場に総額約60億円を投じ、生産設備を増強することを決定したと発表した。同社は100%子会社の積水メディカルを中核として、「検査事業」と「医療事業(医薬・創薬支援・酵素)」の2事業を軸にライフサイエンス分野の拡大に注力しているが、今回の増強により各種医薬品の原料・原薬の受託製造を行う体制を整え、「医療事業」を強化する考えだ。
世界の医薬品市場は100兆円を超え、中国や米国を中心に市場が毎年5%前後拡大する中、従来の低分子医薬品に加え、ペプチド(中分子)・タンパク質医薬(高分子)・細胞医薬・再生医療と医薬品による治療手段の多様化が加速している。
同社グループではこれまで、日本の積水メディカルで低分子医薬品向け原薬など、英国のSEKISUI DIAGNOSTICS社で診断薬向け酵素などの製造・販売を行ってきたが、昨今の医薬品市場の多様化・高コスト化に対応するためには、幅広い領域での供給体制を整える必要があると判断した。
積水メディカルの岩手工場では、約40億円投資し中間体製造棟を新設。低分子医薬品向け原薬・中間体の25%増産が可能となる。また、ペプチド医薬品原料の生産体制の増強も進めている。
一方、英国工場では、約20億円投資し微生物タンパク質培養・精製施設を新設。タンパク質医薬向け原料のCDMO(医薬品の研究開発・製造受託)に向けた体制が整う。両工場の増強が完成すれば、低分子から高分子まですべての医薬品製造領域での受託製造が整備される。また、両工場は、医薬品の製造および品質管理基準であるGMPに準拠した生産設備となり、医薬品原料・原薬の開発・製造が可能になる。
積水化学は、メディカル事業の中で、医療事業をコア戦略領域の1つと位置づけている。今後も大きな成長が見込まれる医薬品市場に向けた生産供給体制の強化と、研究開発・品質管理・サービス体制の強化に努め、製薬会社を中心とした顧客ニーズに応えていく。