太平洋セメント 高信頼・高容量LiB用正極材料を開発

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2021年3月22日

 太平洋セメントはこのほど、リチウムイオン電池(LiB)用の正極材料「ナノリチア(Nanolitia)」(リン酸マンガン鉄リチウム)を開発した。LiBの信頼性の向上と長寿命が期待できる。

 LiBは自動車の電動化や風力・太陽光などの再生可能エネルギー発電による電力貯蔵の要だ。現在主流のニッケルやコバルトを含む正極材料は高容量だが、原材料コバルトの供給不安と、過充電や破損による燃焼の恐れがあり、さらなる信頼性の向上が課題である。

 コバルト不使用の正極材料として流通しているリン酸鉄リチウムは既存正極材より電圧が低い。今回リン酸マンガン鉄リチウムについて、独自の水熱合成技術でナノサイズレベルの均一粒子を合成し、独自のカーボン被覆技術で材料の導電性を向上させ、従来引き出せていなかった材料のポテンシャルを十分に発揮させることに成功した。

 「ナノリチア」は、熱安定性に優れ信頼性は極めて高く、高い容量も確保できる。不純物も少ないため、長寿命や充電時間の短縮も期待できる。既存の正極材料と電圧が同等であるため、単独で正極材料として使うほか、既存の正極材料と混合して性能を維持したまま信頼性を上げることも可能だ。中央研究所(千葉県佐倉市)内に建設中の年間生産能力100tの実証プラントは今年度中に完成・稼働し、本格的な事業化に向けた活動を行っていく予定だ。

 同社グループの経営理念「持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざし、経済の発展のみならず、環境への配慮、社会への貢献とも調和した事業活動」を今後も強力に推進していく考えだ。

日本触媒 LIB用電解質「イオネル」の設備増強を決定

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2020年10月2日

 日本触媒は1日、リチウムイオン電池(LIB)用の新規電解質LiFSI「イオネル」について、独自プロセスによる新規製造設備(年間生産能力2000t)の建設に向け、「イオネル建設チーム」が設備設計に入ることを決定したと発表した。これは、「イオネル」の需要が拡大しており、既存設備(同300t)では不足することに対応したもので、立地場所は日触テクノファインケミカルに建設する。

リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〈LiFSI〉
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〈LiFSI〉

近年、環境問題への意識の高まりから、省エネ・低公害の次世代自動車の代表的存在である電気自動車(EV)に対する期待は高く、EV市場は着実に拡大が続く。「イオネル」は、EV向けLIBの電解質に使用することで、低温から高温まで広い温度範囲で、電池のサイクル特性、レート特性、保存安定性の向上に著しい効果を発揮することから、電解質の添加剤用に限らず主剤として採用され、需要がアジアを中心に伸長している。さらに「イオネル」は、全固体電池などの次世代革新電池の電解質としても性能向上に効果を発揮することから、需要のさらなる拡大が期待されている。

 LiFSIは高純度化が困難な物質であり、その生産や品質管理には高度なノウハウが必要とされるが、日本触媒はこれまで培ってきた独自の生産技術力を生かし、年間2千tを安定生産する技術を確立。また、「イオネル」は同社特許により保護された高純度LiFSIであり、品質面・価格面・知財面で、安心して使用できる。

 新規製造設備の商業生産は2023年春をめどに開始する予定で、2024年には100億円超の売上高を目指す。なお、LiFSI市場が世界的に拡大することが想定されることから、2025年以降の需要に対応するため、欧州での新規設備投資計画も検討している。

日触テクノファインケミカル
日触テクノファインケミカル