日本ゼオン 位相差フィルムで大河内記念技術賞を受賞

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2019年2月19日

 日本ゼオンはこのほど、液晶ディスプレイ用位相差フィルムの生産技術開発による産業発展への功績が評価され、大河内記念会から大河内記念技術賞を受賞することが決まったと発表した。3月26日に、東京都千代田区の日本工業倶楽部で開催される贈賞式で表彰される予定。

 同社が開発した液晶ディスプレイ用位相差フィルム「ゼオノアフィルム」は、熱可塑性プラスチック(シクロオレフィンポリマー)を原料とする光学用フィルム。液晶ディスプレイはさまざまな機能を持った各種フィルムの集合体だが、ゼオノアフィルムは主に位相差フィルムなど、偏光板の部材として使われる。

 今回の評価対象となったのは、独自の加工技術でシクロオレフィンポリマーをフィルム化する「溶融押出法」と、フィルムの分子を一定方向に配向させる「逐次2軸延伸」「斜め延伸」などの延伸技術。

 光学用フィルムは厚み精度への要求が一般のフィルムに比べ厳しく、従来は溶液キャスト法によって製造されてきた。この製法は厚み精度に優れるものの、生産性を上げることが難しく、設備も大規模なものが必要とされ、光学用フィルムの高コストの要因となっていた。

 同社は生産性向上と設備のコンパクト化を目指し、溶融押出法の開発を進め、溶液キャストを凌駕する厚み精度を得ることに成功した。これにより、品質は同等以上で圧倒的なコスト競争力を持つフィルムの生産が可能になった。

 大型液晶ディスプレイ用の視野角を拡大するためには、業界初のプロセスとして縦と横に段階的に延伸させる逐次2軸延伸、スマートフォンなどの中小型ディスプレイには、世界初のプロセスとして任意の角度に分子を配向させる斜め延伸の技術が用いられている。膜厚や分子配向、光学物性などの制御には多くの課題があったが、同社が開発した新たな製法は諸性状の制御を可能とし、産業の発展にとっても大きな後押しとなった。