住友ベークライトはこのほど、植物の主要成分「リグニン」を活用した固形ノボラック型フェノール樹脂を開発し、製造技術を確立し量産機での生産を実証したと発表した。環境対応の熱硬化性プラスチックとして、主力の自動車分野をはじめ各種分野に提供していく。
同社主力製品のフェノール樹脂は石油由来であり、石油資源の調達リスクや温室効果ガスの削減などの課題に対し、非可食性バイオマスなどの植物資源への原料転換が必要になってくる。
リグニンは植物の主要構成成分で、バインダーとして植物細胞に物理的強度や化学的安定性を与える天然フェノール系高分子。芳香族有機資源として地上最大の賦存量をもち、再生可能資源として期待される。
同社は2010年以前からリグニン利用の基礎研究に着手。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」と「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」事業にも参画し、リグニンを使った樹脂合成の基幹技術と産業利用のための樹脂開発を進めてきた。
固形ノボラック型のリグニン変性樹脂は製造面の難易度が高かったが、既存の石油由来フェノール樹脂と同等の加工性、樹脂材料特性、コストの並立が可能となり、量産技術も確立した。
用途に合わせて樹脂特性を調整でき、優れた強度・耐熱性に加えリグニン由来の機能をもつ。用途によってはバイオマス比率50%以上の樹脂設計も可能。環境対応要求が高い自動車や航空機関連部材をはじめ、様々な産業分野で用いられているフェノール樹脂材料への適用・実績化を目指し、国内外の各種産業分野への利用展開を図る。
コスト競争力のある再生可能原料を利用したフェノール樹脂製品の製造プロセスの実現により、二酸化炭素排出量を削減し持続可能な低炭素社会を実現する産業基盤の構築と、SDGsの実現に寄与していく考えだ。