三洋化成工業はこのほど、子会社で、次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発を行うAPBが、JFEケミカル、JXTGイノベーションパートナーズ、大林組、慶應イノベーション・イニシアティブ一号投資事業有限責任組合、帝人、長瀬産業、横河電機の計7社を引受先とする第3者割当増資により、総額約80億円の資金調達を実施したと発表した。
APBは、三洋化成とAPBの現代表取締役である堀江英明氏が共同で開発したバイポーラ積層型のリチウムイオン電池である全樹脂電池の製造と販売を行うスタートアップ企業。
全樹脂電池は、界面活性制御技術を持つ三洋化成が新開発した樹脂を用い、活物質に樹脂被覆を行い、樹脂集電体に塗布をすることで電極を形成している。
こうした独自の製造プロセスにより、従来よりも工程を短縮することで、製造コスト・リードタイムの削減を実現するとともに、これまでにない高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現した。部品点数が少なくて済むバイポーラ積層型で、樹脂で構成しているため、電極の厚膜化が容易に行え、セルの大型化が可能で形状自由度が高いことも特長であり、リチウムイオン電池の理想構造ともいえる。
今回の資金調達は、APBが開発する全樹脂電池の量産工場設立を主たる目的としており、全樹脂電池の量産技術の確立、製造販売の開始に向けて投資を実施する。また、APBは、全樹脂電池の量産やその後の市場展開に必要となる各分野に関し、豊富な経験を持つ新たなパートナーの支援を得ることで、成長を加速していく。
三洋化成の安藤孝夫社長は「曲げても釘を打ちつけても発火せず安全で、形状自由度が高く、低コストにつくれるという革新的でユニークな全樹脂電池は、あらゆる生活の場面を豊かにし、持続可能な社会の創造に貢献できるものだ。三洋化成はAPBの株主としてそのような全樹脂電池の事業化を支援し、パートナー企業とともに『オールジャパン』の体制を作っていければと考えている。10月に統合を控えているが、三洋化成・日本触媒の強みを融合し、経営リソースを投入して統合後も引き続きAPBをサポートしていく。そして10年後には数千億円程度の事業へと成長させたい」とコメントしている。