革新的素材の開発を加速、素材から提案力強化が重要
━自動車産業の動向をどう見ていますか。
沼舘 欧州では昨年、英国が内燃機関で走るガソリン車やディーゼル車の販売を2040年までに禁止する方針を打ち出した。また電気のみで走行可能な距離が50マイルに満たないハイブリッド車も販売禁止の対象に含めるといった案も検討しているとの情報も伝えられている。
先日も、英議会のビジネス・エネルギー・産業戦略委員会では、温室効果ガス排出削減に向けて販売禁止時期を8年前倒し、EV導入の奨励策が必要といった提言もなされたようだ。こうした動きが自動車産業に影響を与えることから経済産業省としても注視している。
一方、中国ではEV普及の動きが強まっており、2019年にはEVの生産や販売を義務付ける「NEV」規制が導入される予定だ。欧州や中国でのEV化の流れは加速していくことが予想され、その流れを逃すことなくウォッチしていく必要があるだろう。素材産業にとっても自動車産業の100年に1度の変革期をチャンスとして捉え、成長につなげていくことが求められる。
すでに素材産業の各社では、様々な攻めの展開がはじまっていると承知しており、現場からの声としても聞いている。今後は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」といった潮流のなかで、高機能に対するニーズを積極的に取り込みながら、新たな素材や材料の創出、また更なる広がりというものが進展していくのではないか。
━温室効果ガス(GHG)やCO2による地球温暖化といった環境問題も、自動車産業に影響を与えています。
沼舘 経済産業省の自動車課では、自動車業界を取り巻く環境が大きく変化していく中で、わが国の自動車産業が世界のイノベーションをリードし、環境問題や渋滞問題などの解決に積極的に貢献していく戦略づくりを進めている。
その一環として、今年4月に「自動車新時代戦略会議」を立ち上げた。7月には中間整理が発表され、その中ではとりわけ電動化について、世界に向けて長期的なゴールが掲げられた。
2050年までに世界で供給する日本車について、世界最高水準の環境性能を実現するとして、1台当たりのGHG排出量八割程度の削減を目指すとして、乗用車の電動化率は100%に達すると想定されている。この方針から、自動車産業では環境性能を含めた電動化が加速化していくことが見込まれ、自動車メーカーでは経営戦略の見直しの動きが想定される。
素材産業にとっては、