東亞合成と鴻池組は12日、京都大学大学院地球環境学堂の勝見武教授の技術指導のもと、主に液状化対策を目的とした複合ポリマー型地盤改良剤「CXP」を共同開発したと発表した。
開発品は、アルカリ性地盤でも一般的な砂質地盤と同様に安定して設計強度を確保でき、注入後速やかに強度発現する、安全で浸透性や耐久性に優れるもの。両社は開発品を使用する薬液注入工法(CXPグラウト工法)のフィールド試験を行い、その有効性も確認した。
同地盤改良剤は、アクリル酸マグネシウム(AA‐Mg)を主剤とし、ポリ塩化アルミニウム(PAC)と添加剤を混合・添加した薬液で、改良土に必要な強度に応じてAA‐MgとPACの濃度を決める。
注入後、重合したAA‐Mgから成る高分子鎖は、架橋剤となるPACによりネットワークを形成し、養生期間は従来の約5分の1となる5日で高い架橋密度かつ高強度のゲル(複合ポリマー)になる。
また、この高分子鎖の主鎖骨格は、化学的に安定している炭素‐炭素結合からなるため、劣化要因となる加水分解などの分解反応が発生しない。経時安定性が高く、長期的な地盤改良効果が得られる。
アルカリ性地盤への適用性については、㏗10~12に調整した砂の改良体(サンドゲル)が液状化対策として必要な一軸圧縮強と液状化強度を確保し、長期耐久性をもつことを室内試験で確認。安全性についても、同地盤改良剤が魚類や甲殻類といった水生生物に対して影響を及ぼさず、改良土は土壌汚染対策法に適合することを確認した。
薬液注入による液状化対策技術は、既設護岸の背面地盤や既設タンクの基礎地盤などを中心に数多く適用されており、実地震での液状化防止効果も確認されている。
しかし、その注入材として用いられている水ガラス系薬液の多くは、地盤の㏗値が9~10程度以上でゲルの溶解度が急激に上昇するため、工場施設などの敷地で多く見られるアルカリ性地盤では、改良土の劣化や強度低下が懸念される。
また、注入後は養生期間に28日を要し、配合試験や改良効果確認試験を含めた全体工程が長くなることから、早期に十分な強度を発現する注入材の開発が望まれていた。
両社は今後、公的機関の技術評価を取得するとともに、実工事を通じて地盤災害の防止に貢献していく考えだ。