帝人フロンティアはこのほど、半導体用シリコンウエハーの製造で、品質の安定とコスト削減の両立を実現する、超極細繊維「ナノフロント」を使用した研磨パッドを開発したと発表した。半導体メーカーとフラットパネルディスプレイメーカーをターゲットとして、今年度中に販売を開始し、2025年度に売上10億円を目指す。
同社が開発した研磨パッドは、「柔軟性」と「吸水性」のあるポリマーを原料として製造した「ナノフロント」製不織布に、ポリウレタン樹脂を含浸させたもので、多くの特長をもつ。
①パッド部分に使用した「ナノフロント」は表面に吸水性があり、繊維間の空隙数が多いことから、パッド表面が砥粒(研磨材の粒子)の付着性と砥粒研磨液の保持性に優れる。
②これにより、研磨液の砥粒濃度を下げても、パッドに高い密度で砥粒が付着するため、充分な研磨効率を発揮する。
③「ナノフロント」の柔軟性により、シリコンウエハーの鏡面仕上げも同時に行える。
④「ナノフロント」を使用した不織布は表面積が非常に広く、液中の砥粒の凝集を抑制する効果があり、研磨品質の安定化に寄与する。
開発の背景には、近年のスマートフォンやEVなどの普及に伴う半導体の高性能化や低価格化があり、シリコンウエハー製造での品質の安定とコスト削減のニーズが高まっている。
また、シリコンウエハーに求められる表面の平坦性や鏡面性といった品質特性を発現させるためには、異なる硬度のパッドを使用した研磨作業が必要で、そのために工程が複数にわたらざるを得なかった。
加えて、シリコンウエハーの製造に使用する砥粒の研磨液が製造コストの中で大きな割合を占めることから、研磨品質を維持しつつ、砥粒研磨液の使用量を削減することが課題となっている。
同社は今後、さらに「ナノフロント」のポリマーの種類や、ポリウレタンの含浸技術、研磨液との相乗効果などに着目しながら、さまざまな市場ニーズへの対応を目指し、研磨パッドの製品バリエーションを拡大していく。