産総研 酸化チタン接合で結晶Si太陽電池の効率向上

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2020年11月30日

 産業技術総合研究所はこのほど、ドイツ・フラウンホーファー研究機構と共同で酸化チタン(TiO2)薄膜が結晶シリコン(Si)の表面欠陥を不活性化し結晶Siから正孔を選択的に取り出すことを発見。TiO2薄膜を正極側に配した結晶Si太陽電池で20%超の変換効率を実証した。

 太陽電池の9割以上を占める結晶Si型の変換効率は約20%。結晶Si内で光励起した電子と正孔を負極と正極から取り出すが、結晶表面の欠陥で電子と正孔が再結合して消滅する。表面欠陥の不活性化に使うアモルファスSi薄膜の成膜には設備投資や維持費が大きく、高効率化と低コスト化は背反する。

 今回、光関連で汎用されるTiO2に注目し、有機金属錯体と水蒸気による原子層堆積法でn型結晶Si表面に厚さ約5㎚の非晶質TiO2を製膜。さらにスズドープ酸化インジウム(ITO)透明電極と銀のグリッド電極を形成して正極とし、太陽電池を作製した。疑似太陽光を正極側から照射した際の開放電圧は、ITOのみの場合の200㎷に対し500に、TiO2成膜後に水素プラズマ処理すると670まで増加した。

 TiO2は様々な材料に対して電子選択性が高く負極に使われるが、正極としても機能した。これは欠陥不活性化能と正孔選択性が、TiO2/結晶Si界面に形成する相互混合層の組成や分布に依存するためである。このTiO2を使った太陽電池は、従来のアモルファスSi使用のヘテロ接合型結晶Si太陽電池に比べて、波長400~600㎚での高い外部量子効率と短絡電流密度の改善で、変換効率21.1%を示した。波長約400㎚以下の紫外線照射で劣化するが、非受光面に成膜した場合は劣化しなかった。p型結晶Siの非受光面に製膜した場合も劣化はなく、変換効率は20%程度。n型だけでなく汎用のp型太陽電池など様々なタイプにも応用でき、高効率・低コストの太陽電池の実現が期待される。

 今後さらなる高効率化と紫外線耐性の検討を進め、さらにTiO2/Si界面での正孔輸送メカニズムを明らかにし、無機・有機系太陽電池やSiを組み合わせたタンデム型太陽電池、光電気化学デバイス、半導体デバイスなどへの応用も検討する。