東ソーは19日、「高強度ジルコニアの工業化と市場確立」で、公益財団法人大河内記念会より「第65回(平成30年度)大河内記念技術賞」を受賞したと発表した。今回の受賞は、加水分解法によるジルコニア微粒子の合成機構を究明して品質の安定した高品位ジルコニア粉末が製造できる量産技術を確立したこと、特に焼結体微細組織の定説を覆す粒界偏析誘起相変態を発見し、本質的な弱点である劣化を克服した新ジルコニアの開発に成功したことなど、高強度ジルコニアの工業化と市場確立に大きく貢献したことが高く評価されたもの。
ファイン・セラミックスの一種である高強度ジルコニアは、1980年代に実用化。当時は適切な粉末製造技術が確立していなかったため、原料粉末の品質安定化と量産が困難な状況であり、また高温大気や熱水中では劣化が著しく常温使用に用途が制限されていた。
同社は、これらの課題に取組み、ジルコニア粒子制御技術の開発と革新的な加水分解プロセスを確立したことで、高強度・高靱性に加えて劣化を著しく抑制した高信頼性を特長とするジルコニア粉末の製造を実現し、これまでに粉砕用ボールや光ファイバ用接続部品、各種構造部材に加えて、審美性に優れる歯科材料などさまざまな用途への利用を進めることで、高強度ジルコニアの市場形成の進展に寄与してきた。さらに、同技術は多様な形状の製品製造や広範囲な色調・透光性の制御も可能であり、高強度材料としての用途のほか光学機器や装飾品用途、触感性に優れた携帯機器部材など、新たな用途での展開が進むと期待されている。
大河内賞は、大河内正敏博士の功績を称え、その遺志である生産工学の振興を目的として設立された大河内記念会が、日本の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施などに関する顕著な功績を表彰する権威ある賞。今回、同社が受賞した「大河内記念技術賞」は、「生産工学および生産技術上優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に貢献した顕著な業績」に贈られる。同社は、今回の技術賞受賞を励みとし、今後も革新的な研究開発に取り組んでいく。