帝人は30日、LS-EV(低速EV)の軽量化に向けた開発パートナーである豪州・AEV社と、LS-EVのプロトタイプを共同開発したと発表した。
両社は、将来のEVに求められる技術基盤を獲得・整備するため、2019年からLS-EVの共同開発を推進。最近の成果として、多目的LS-EV向けプラットフォームや、太陽電池搭載のLS‐EV向けルーフを開発している。
今回開発した4人乗りのLS-EVのプロトタイプは、両社が共同で取り組んできた「Well to Wheelゼロエミッション」というテーマを具現化。帝人の軽量・高強度素材、加工に関する最先端技術、成形ノウハウと、AEV社がもつLS-EVの基本設計や、低エネルギーでの駆動・制御などに関する技術を最適条件で組み合わせて設計している。車体プラットフォームには、低エネルギーでの走行が可能な「Blanc Robot」を使用しており、最適なエネルギー効率を発揮し、無人走行システムにも対応できる。
一方、車体の窓やドアには、軽量で耐衝撃性に優れる帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」製のグレージングを使用。洗練されたスタイリッシュな外観を実現し、優れた赤外線遮断性で室内の温度上昇の抑制を可能にした。また「パンライト」製のグレージングを曲面形状に一体成形したルーフには、ソーラーパネルと軽量な給電モジュールを搭載。豪州の日照条件下での試験では、一般的なソーラーパネルと同等の約330Wを記録した。
さらに車内には、帝人フロンティアが展開するポリエステル製タテ型不織布を、断熱・吸音材に使用。外気による車内温度への影響やロードノイズを低減させることで、車両のエネルギー効率や快適性の向上に貢献している。これらによりエネルギー効率は、両社が目標としてきた歩行者レベルの消費エネルギーとほぼ同等で、自動走行車としては過去最高レベルのものとなった。
帝人は今後、近未来のモビリティへのニーズを先取りし、自社の高機能素材や設計、デザイン、複合化技術による技術提案力を強化することで、「Well to Wheelゼロエミッション」の実現に向けた取り組みを一層強化していく。