花王 CNF疎水化技術、複合高機能樹脂の提供を開始

, ,

2020年6月16日

 花王はこのほど、バイオマス由来のセルロースナノファイバー(CNF)を改質し、各用途の樹脂に配合することで、少量でも樹脂の強度や寸法安定性を向上させることを可能にした。この改質CNF配合高機能樹脂を、ユーザーニーズにあわせてカスタマイズした「LUNAFLEX(ルナフレックス)」シリーズとして提供を開始する。今後、改質CNF配合による物性向上が資源の効率的利用に寄与し、社会のサステナビリティに貢献することが期待される。

 CNFは、植物中でセルロース分子の束を形成しており、サステナブルな高機能素材として世界中でその有効活用が望まれている。高強度・高弾性など様々な機能を持つことに加え、樹脂に配合すると、樹脂の強度や靱性、寸法安定性の向上効果がある。

 しかし、分子間や分子内で強固に水素結合をしているため、ナノファイバーとして単離することは非常に難しい。 また単離した後もその表面は強い親水性を示すため、油性溶媒にはなじみが悪く、分散安定化は非常に困難だった。さらに、樹脂への配合の際にCNFが凝集してしまうなどの不具合が生じてしまうことが多く、樹脂中への均一ナノ分散には種々のノウハウが必要となる。

 こうした中、花王は独自に積み上げた界面制御技術に基づき、CNFの表面に様々な官能基を付加することで発現する機能を探索。その結果、親水性のCNF表面を疎水表面へと改質することが可能となり、CNFを樹脂へ均一ナノ分散することに成功した。

 同社は、複合化原料の提供だけにとどまらず、改質CNF配合樹脂を「LUNAFLEX」シリーズとして提供する取り組みを開始。表面改質を施して樹脂への分散・混合性を向上した改質CNFを光硬化性アクリル樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、および熱可塑性フェノキシ樹脂に対して配合したところ、顕著な物性の向上が認められている。

 同社は今後も、ユーザーが使用する様々な樹脂や使用場面に対して同社CNFが有効活用されるよう、新たな製品、性能を提案していく考えだ。