NEDOは未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合・東京大学と、多結晶体などの複雑なナノ構造を持つ様々な熱機能材料の熱伝導率を、手軽で高精度に予測・熱伝導現象を再現するソフトウエア「P‐TRANS」を開発した。
東大が開発したモンテカルロ・レイトレーシング法と、構造作製ツールや可視化ツールなどのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を融合したもので、学術界や産業界などの研究現場での普及を目標に使いやすさを重視した。
このソフトウエアの活用により、複雑な形状や内部構造を考慮したミクロな領域の熱物性を把握でき、高性能な熱機能材料の研究開発が促進されることが期待できる。
徹底した省エネのためには、エネルギーの供給過程で有効利用されずに捨てられている未利用熱を、削減・回収、熱として蓄え再利用し、さらにほかのエネルギー形態に変換して利用するための「熱の3R」に向けた熱機能材料やデバイスを開発し、社会実装することが必要だ。
しかし、研究開発と実用化が進められているこれらの材料やデバイスの性能を抜本的に高めるためには、材料の微視的な熱輸送解析(熱伝導率の予測・熱伝導現象の再現)による、ナノスケールの熱の設計とミクロな領域の熱物性の理解、さらにそれらに基づく材料設計と熱制御が不可欠である。
「P‐TRANS」を使うことで、ナノ構造化した際の熱伝導率の低減効果を試算できるほか、高熱伝導材料の作製時に生じる多結晶構造の粒界が熱伝導率に及ぼす影響も把握できるため、高性能な熱機能材料開発の加速化が期待される。
今後、「P‐TRANS」の機能拡張と活用を進め、効率的な材料・デバイスの開発と抜本的な性能向上を図り、熱の3Rによる徹底した省エネルギーの実現を目指す。なお、東大はこのソフトウエアをウェブサイトで公開しており、無償でダウンロードできる。