東洋紡 RNA解析キット販売、理研の技術を製品化

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2019年9月20日

 東洋紡はこのほど、理化学研究所(理研)の生命機能科学研究センター・バイオインフォマティクス研究開発チームが開発した「一細胞完全長トータルRNAシーケンス法「RamDA‐seq」を簡便に活用できる「RNA解析キット」を製品化したと発表した。

RNA解析キット
RNA解析キット

 理研の技術指導のもとに製品化した「RNA解析キット」は、様々な試薬や取り扱いマニュアルなど、「RamDA‐seq」を用いたRNA解析に必要なコンポーネントをキット化したもの。

 理研が発表した論文や実験手順書で指定される試薬が予めキットとして調整されているため、マニュアル通りの手順を踏むことで解析用のサンプル調製をスムーズかつ安定して行うことが可能になる。

 今月30日から、がんなどの治療薬を開発する製薬会社や研究機関向けに販売を開始。2022年度に年間10億円の売上を目指す。

 日本国内では今年6月からゲノム医療の保険適用が開始され、個々の患者の遺伝子を解析することで、適切な治療法や薬剤を選択する個別化医療が進展している。

 近年、遺伝子配列に変異が起きるような、がんなどの疾患については、個々の細胞で性質が異なるため、1つ1つの細胞に含まれるすべての遺伝子を解析することの有効性が示されてきた。しかし、従来の方法では、1つの細胞に含まれる微量なRNAから、疾患の原因となる変異をもれなく計測することが困難だった。

 理研は昨年2月、対象となるRNAを偏りなく増幅し、RNAの発現量と完全長を一細胞で計測できる「RamDA‐seq」を開発。1つの細胞の中に存在するRNAの種類と量を網羅的に計測する方法を実現した。

 これにより、これまで検出が難しいため機能がよく分かっていなかった、非ポリA型RNAをはじめとする多様なRNAをもれなく計測することができ、疾患の原因となる遺伝子情報の異常について、解析の精度を飛躍的に高めることに成功した。

 東洋紡が販売する「RNA解析キット」により、一細胞レベルの多種・多量なRNAの変異の解析を容易にする「RamDA‐seq」の普及が拡大し、基礎研究から再生医療・ゲノム医療まで多くの分野の発展に貢献することが期待されている。