需給タイトが継続、定修やトラブル発生が背景に
宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、4月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比50ドル高の1950ドル/tで決着した。同社は、2月には設備トラブル、3月にはアンモニア不足といった要因で安定供給が困難となり、台湾の指標価格での取引が続いていた。今回、こうした要因が解消し生産体制が正常化したことで、3カ月ぶりに契約価格が成立している。
主要な輸出先である台湾市場は、同国内で生産トラブルが続いたことに加え、原料ベンゼンをはじめとする原料価格の高騰や物流費の上昇などが反映され、3月は300ドル以上も急騰した。これに加え、台湾大手メーカーが定修を予定していたこともあり、4月の契約価格は一段高となっている。スプレッドは、ベンゼンACPがやや弱含んだことで、1115ドルに改善した。昨年度(4-3月期)の平均スプレッドは、761ドルと厳しい状況となったが、今年度は2018年度(1252ドル)以来となる1000ドル以上のスプレッドを確保できるかが注目される。
一方、中国・SINOPECは、3月(下旬決め)の契約価格について、前月比172ドル高(1500人民元高)の1755ドル/t(1万4100人民元)と大幅上昇で決着した。しかし、3月31日には4月の公示価格を1693ドル/t(1万3700人民元)と一段安で提示し、韓国・台湾向け価格と価格差が250ドル超に拡大した。その背景として、中国のナイロンチップが生産過剰となり価格が下落したことが影響している。中国ではCPL・チップ・ヤーン(糸)とナイロンチェーンが形成されているため、海外価格の影響を受けにくい。そのため、台湾価格が高止まりとなっているのにもかかわらず、中国のCPL価格が弱含んでいる状況だ。
中国の4月初旬のチップの稼働率を見ても、70%と前月初旬から10ポイント近く悪化。中でも販売が落ち込んでいる低グレード品は66%まで稼働が低下しており、チップ全体の稼働を引き下げていると見られる。ただナイロンチェーン全体では、CPLが90%(3月初旬90%)、ヤーンが85%程度(同80%)と好調を継続。特にヤーンは4月に入ってからは87%まで稼働率が上がっており、チップの低迷が目立っている状況だ。
今後についても、CPL契約価格は高水準を継続するとの見方が強い。足元では、台湾大手メーカーの1工場にトラブルが発生し、需給タイトに拍車がかかっている状況。また、不安定なベンゼン市況も上昇気配を見せており、価格への転嫁が進む可能性が高まっている。
なお、宇部興産の各工場については、宇部工場とスペイン工場はフル稼働だが、タイ工場は稼働を10~20%落としているもよう。原料アンモニアの調達不足は解消したものの、今度はローカルメーカーの生産トラブルで硫黄不足が要因と見られる。