NEDOと長瀬産業 希少アミノ酸の生産性を1000倍に向上

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2020年10月16日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構と長瀬産業はこのほど、食品・化粧品・医薬品など幅広く利用が期待される希少アミノ酸「エルゴチオネイン(EGT)」の生産性を、NEDO開発のスマートセル技術の活用で約1000倍に向上させたと発表した。これは世界最高レベルの生産効率で、安価で高純度な環境配慮型EGTバイオ生産プロセスの確立が可能となった。

 EGTはキノコなどに微量含まれる抗酸化能に優れた希少アミノ酸。人にはFGTを利用する仕組みがあるため、食事摂取による脳機能の改善、皮膚、眼、各種臓器細胞の酸化ストレスからの保護が示唆される。天然物からの抽出では含有EGTが微量、化学合成では環境負荷が大きいなど、安価で低環境負荷の製法は未確立だ。

 NEDOは2016年から、植物や微生物細胞の物質生産能力を最大限引き出す生物合成技術「スマートセル」を構築し化学合成では困難な有用物質の創製、化学合成を上回る生産性を目指す「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」事業(スマートセルプロジェクト)を推進してきた。長瀬産業は2015年に安価で安定供給可能な環境配慮型バイオ生産プロセスの開発を始め、昨年度から同事業に参画して研究開発を加速してきた。

 今回、同プロジェクト独自のスマートセル基盤技術「酵素改変設計技術」「代謝経路設計技術」「HTP微生物構築・評価技術」「輸送体探索技術」により細胞内の生産反応の最適化に成功。生産効率は世界最高レベルの従来比約1000倍を達成した。

 今後、同生産菌株を活用し早期の事業化を進め、化学合成が難しい有用物質の創製、低コスト・低環境負荷の生産プロセスである「スマートセルインダストリー」の実現に貢献していく考えだ。

プロジェクト概要
プロジェクト概要

 

グンゼ 静脈用血管再生基材が米国で臨床試験開始

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2020年10月16日

 グンゼはこのほど、ネーションワイド・チルドレンズ病院(NCH、米国オハイオ州コロンバス市)に提供している静脈用血管再生基材を使用した小児心臓血管手術が病院主導による治験試験に入ったと発表した。

「静脈用血管再生基材」外観
「静脈用血管再生基材」外観

 先天的な病気「単心室症」には非吸収性人工血管を使用したバイパス手術が行われるが、生体部分の成長に追随せず数度の人工血管交換の開胸手術を必要とする上、人工血管の詰り防止のために抗凝固薬を飲む必要があり、患者への負担と小児が思う存分遊べないなど、クオリティーオブライフ(QOL)に課題がある。

 その解決に向け、NCHの新岡俊治博士とクリストファーブリューワー博士は同社の吸収性医療機器製造技術を活用した「自己細胞を使った再生血管(TEVG)」を開発し、FDAの治験承認を昨年受けた。単心室症は希少疾患であり商業化は困難であるが、同社CSV経営のマテリアリティ(重要課題)「QOLの向上への貢献」に従い、同病院主導の治験により実用化を目指すことを決定した。

 静脈用血管再生基材は同社の「生体内吸収性材料」と「縫製技術」による筒状物で、そこに患者の骨髄細胞を転移させて人工血管を形成。心臓血管バイパスとして埋め込んだ後約6カ月で血管再生基材は吸収され、患者自身の組織で血管として再生する。先行試験で、再生血管は患者の成長に追随することを確認。その後の手術の回避や日常生活の制約は減り、QOL向上につながった。

 今後、同臨床試験で安全性・有効性の確立・確認を進めるとともに、販売体制の確立に努め、年間売上高4億円を目指す。また「生体内吸収性材料」「繊維・高分子加工技術」の強みを生かし、生体の能力を生かした医療機器、低侵襲治療に対応する医療機器、再生医療用基材など、QOL向上に資する製品の研究開発を進める考えだ。

三菱製紙 「抗菌板紙」「抗菌クラフト紙」の販売を開始

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2020年10月16日

 三菱製紙はこのほど、抗菌性を付与した紙製品「抗菌板紙」と「抗菌クラフト紙」を今月から生産販売開始すると発表した。同社は抗菌性商品の開発を行い、白板紙ベースの抗菌紙を長年販売してきたが、今回品揃えを拡大し、改めて抗菌分野の商品を拡充した。

 白板紙ベースの「三菱抗菌板紙」と晒クラフト紙ベースの「抗菌クラフト紙FSC認証‐MX」は、大腸菌、黄色ぶどう球菌の抗菌効果をもち、各種印刷適性に優れ、製函加工適性や製袋加工適性も備えている。蛍光染料を使用していないため、食品包装用途にも使用可能。さらに紙の利用を通じてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献できるFSC森林認証紙も対応可能で、クラフト紙ベースの製品は「FSC森林認証紙」として品揃えしている。

三菱製紙 クラフト紙
抗菌効果 24時間培養後の生菌状況

 

 

住友ゴム 「京」活用のゴム材料シミュレーションで受賞

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2020年10月16日

 住友ゴムはこのほど、スーパーコンピュータ「京」を活用して取り組んだ研究「タイヤ用ゴム材料の大規模分子動力学シミュレーション」が、HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)利用研究課題優秀成果賞を受賞したと発表した。より高い安全性と環境負荷低減に貢献できるタイヤ開発を目標に、2012年より「京」を活用した大規模分子動力学シミュレーションによりゴム材料の研究開発を進めてきた。

 今回受賞した研究は、ゴム材料の強度に及ぼす添加剤(シリカとカップリング剤)の結合状態の影響を、ゴム伸長時のボイド(破壊の起点となる空隙)生成の分子レベルでのシミュレーションにより明らかにし、ゴムの耐摩耗性向上に繋がる成果を得たもの。

 今後はこの成果を新たなゴム材料・商品の開発に生かすとともに、さらなる向上を目指して、来年から本格的に共用開始されるスーパーコンピュータ「富岳」の活用にも取り組んでいく考えだ。

BASF 柑橘系オイルバレンセンが食品添加物指定

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2020年10月16日

 BASFはこのほど、傘下のアイソバイオニクス社(オランダ、ヘレーン)が生産するバイオテクノロジーベースのバレンセンが、日本国内市場向け食品添加物として初めて厚生労働省により指定されたと発表した。

 アイソバイオニクス社はバイオテクノロジーベースの香料原料会社で、昨年BASFが買収し、アロマイングリディエンツ事業の一部となった。独自の発酵技術でヌートカトンやバレンセンなどの柑橘系オイル成分を中心に生産している。再生可能原料に基づき、季節的要因に左右されずに高品質・安定な製品の供給が可能。

 バレンセンおよびバレンセンを原料とするヌートカトンは、オレンジやグレープフルーツにも含まれる重要成分で、国内の香料業界で需要が高い。主に清涼飲料水などの飲料用フレーバーとして使用されており、今回の指定により日本国内で食品添加物としての使用・商品化が可能となった。

 日本はアジア太平洋地域の重要かつ急速に成長している市場であり、今回の承認はアジア太平洋地域での柑橘類フレーバーの商品化に画期的であるとしている。

帝人フロンティア 災害対策や感染予防に向け備蓄用寝具を販売開始

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2020年10月16日

 帝人フロンティアはこのほど、災害対策や感染予防などでの使用を想定し、軽量、コンパクトで、梱包や保存が可能な備蓄用寝具を開発したと発表した。先月末から掛け布団、敷き布団の販売を開始している。

 これまで、インフルエンザなどの感染症が急速に流行した場合、患者が使用した寝具の洗浄が間に合わないという状況が起こっていた。加えて、最近では新型コロナ感染症の拡大・長期化により、こうした事態がより深刻化しており、医療機関での寝具不足や感染リスクの軽減につながる寝具の開発が求められている。一方、近年の台風や水害、地震などの自然災害の甚大化や、「帰宅困難者対策条例」の制定などを受けて、避難所や帰宅困難者向けの備蓄用寝具のニーズが高まっている。

 こうした中、同社では、必要な備蓄スペースが小さく、長期の保存ができ、応急の使用が可能なディスポーザブルタイプの備蓄用寝具を開発した。一般的なポリエステル中綿布団に比べ、中綿量が約4分の1~6分の1と軽量で、圧縮梱包することでコンパクトに収納することができる。また、中綿にはリサイクルポリエステルを50%使用しており、グリーン購入法にも適合している。

 同社は販売目標として、今年度は2000万円、2023年度には3億円を掲げている。

備蓄用掛け布団
備蓄用掛け布団

 

住友ベーク 5G対応基板材料を開発、サンプル供試を開始

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2020年10月16日

 住友ベークライトはこのほど、第5世代移動体通信システム(5G)の高周波回路基板用として誘電特性が優れかつ低熱膨張、高弾性率の基板材料「LαZ-4785KS-LE(コア材)」「LαZ-6785KS-LE(プリプレグ)」シリーズを開発し、サンプル供試を開始した。

 5Gは高速・大容量、低遅延、多数接続などのためより高い周波数領域を使用するが、アンテナをICパッケージ上に設置したAiP(アンテナ・イン・パッケージ)、RFモジュール(無線ICと周辺回路を実装した電子部品)、メモリーなどの高周波アプリケーションの回路基板材料には低消費電力、低遅延のための低誘電率、低誘電正接が求められる。

 同社が生産・販売する半導体パッケージ基板材料「LαZ」シリーズの特徴である低熱膨張、高剛性、高弾性率特性を維持しつつ、新たな樹脂設計や配合技術により誘電率3.4、誘電正接0.003(10GHz)を達成し、ビア形成プロセス性能(レーザー穿孔・ビア底のクリーニング性)も十分に確保。銅配線との密着性にも優れ、微細配線と銅表面の低粗度により、信号伝送損失の低減が期待できる。すでにいくつかの基板メーカー、エンドメーカーで評価を開始し、来年の量産化を予定している。半導体パッケージ基板関連材料全体で2023年度に売上50億円を目指す。

ユーグレナ 東北大学病院に免疫機能の研究拠点を開設

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2020年10月16日

 ユーグレナはこのほど、東北大学と新たに共同研究契約を締結し東北大学病院内に「東北大学病院ユーグレナ免疫機能研究拠点」を開設すると発表した。東北大学と共同で行ってきた微細藻類ユーグレナの機能性研究を、メディカル分野へと拡張し、大学病院との協働でより積極的なメディカル分野の研究開発を目指す。

 これまでの免疫関連研究で、ユーグレナに含まれるβ-1,3-グルカンの一種パラミロンが免疫機能に関与してインフルエンザ症状を緩和する効果を確認。昨年からは、同大学の未来型医療創造卓越大学院プログラムを通じてメディカル分野の技術開発と社会実装などヘルスケア領域の技術開発に取り組んでいる。

 これをさらに拡張する目的で、同大学病院内の課題解決型研究開発実証フィールド「オープン・ベッド・ラボ」に「東北大学病院ユーグレナ免疫機能研究拠点」を開設。大学病院の研究開発インフラを活用し、メディカル分野の研究開発活動を加速させる。

 共同研究の内容は、免疫機能分野では、免疫関連バイオマーカーの探索、免疫応答の機能評価、免疫訴求製品の処方検討の3テーマを予定する。メディカル領域では、マイクロニードル活用の医療機器開発と新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発。そして研究シーズのインキュベーションとしては、東北大学のもつ技術シーズのメディカル分野への応用可能性を調査し、対象技術の事業価値評価やハンズオン投資の可能性を検討していく。

 同社はヘルスケア分野の研究開発や事業を推進し、持続可能な健康を実現する商品やサービスの開発を通じて社会貢献を目指す考えだ。

『東北大学病院ユーグレナ免疫機能研究拠点』(オープン・ベッド・ラボ)イメージ写真(提供:東北大学病院)
「東北大学病院ユーグレナ免疫機能研究拠点」(オープン・ベッド・ラボ)イメージ写真(提供:東北大学病院)

信越化学工業 半導体用レジストを増設、日本と台湾の2拠点

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2020年10月16日

 信越化学工業は15日、半導体用フォトレジストについて、日本と台湾の製造拠点で設備投資を行うと発表した。投資金額は合計で300億円。

信越電子材料(台湾雲林県)
信越電子材料(台湾雲林県)

 半導体は5GやCASEといった先端分野で需要が伸びていることに加え、微細化など製造プロセス技術も高度化している。こうした中、同社は、供給と技術の両面で顧客からの要望に応えるため、半導体製造に不可欠なフォトレジストの設備増強を、信越電子材料(台湾)と信越化学直江津工場(新潟県上越市)の2拠点で実施する。

 同社は昨年7月に台湾の信越電子材料で第1期工事を終了しフォトレジストの生産を開始。生産拠点の複数化を実現して供給安定性を高めた。同拠点ではすでに新たな工場棟の建設を進めており、今回さらに生産設備を増強し来年2月までの完工を目指す。一方、直江津工場でも、新たに建屋を建設し能力増強を進める計画で、2022年2月までの完工を目指す。

 同社は、高感度のArFフォトレジストや、回路パターンの寸法精度を向上させる多層レジスト材料を開発し量産化。最先端のフォトレジスト関連製品を顧客に提供してきている。

 今後も、半導体デバイス市場の拡大、トランジスタ数の増大と省電力化のためのデバイスプロセスの進化による半導体関連材料の需要を着実に取り込み、事業基盤の強化をさらに進めていく考えだ。

東大ら 高再現性・生体適合性高感度ラマン分光法を開発

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2020年10月15日

 東京大学、産業技術総合研究所、神奈川県立産業技術総合研究所はこのほど、東大合田圭介教授の研究グループが極めて高い再現性、感度、均一性、生体適合性、耐久性をもつ表面増強ラマン分光法(SERS)の基板を開発し、実用的な微量分析法を実現したと発表した。

 1970年代に発見されたSERSは、金属基板上の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により通常のラマン分光法よりも数桁以上高い感度で無標識の微量分析に有効であったが、感度は金属ナノ構造による強電磁場の位置(ホットスポット)に依存するため低再現性、不均一性で、金属基板の光熱と酸化による低生体適合性、低耐久性が課題であった。金属基板代替のシリコンやゲルマニウムナノ構造体、グラフェンなどの2次元材料、半導電性金属酸化物などは構造共鳴や電荷移動共鳴による最大5桁程度の感度増強が実証されたが、固有の光触媒活性や生体分子への有害性により、再現性は低かった。

 今回LSPRに依存しない、金属不含有の多孔質炭素ナノワイヤをアレイ状に配列したナノ構造体(PCNA)基板を開発。広帯域電荷移動共鳴による化学的増強により約6桁の感度増強を実現した。基板全面が活性化するため高い再現性と均一性、耐久性を示し、光熱によって損なわれていた生体適合性も大幅に改善した。これらの特性は、ローダミン6G、β‐ラクトグロブリン、グルコースなどの分子で実験的に実証した。またPCNA基板は1枚約1000円で大量生産が可能だ。

 同手法の高い実用性および信頼性により、分析化学、食品科学、薬学、病理学など多岐にわたる学術分野に加え、感染症検査、糖尿病検査、がん検診、環境安全、科学捜査などでの微量分析への展開が期待される。