海外市場の競争激化、脱炭素化への対応もカギに
わが国化学産業の根幹をなす石油化学事業は、大きな転換点を迎えている。コロナ禍よって落ち込んだ需要は回復基調にあるものの、今年はアジア地域で大型コンプレックスの稼働が予定されるなど、需給バランスの悪化が懸念されている。各社はこれまで市況変動への体制を強化するため、設備の構造改革や製品の高付加価値化を進めてきた。しかし、コスト競争力の高い海外メーカーとの競争で生き残るためには、もう一段の構造改革やバリューチェーンの強化など、早急に次の一手を打つ必要があるだろう。一方、脱炭素化の動きも加速している。
昨年、政府はカーボンニュートラルを宣言し、今年4月には2030年のGHG削減目標も引き上げた。CO2を排出する石化事業にとっては野心的な目標となっており、これにどう貢献していくかが問われている。原燃料のグリーン化やCO2利用、また水素やアンモニアの活用といったイノベーションが求められているが、サステナブルな事業にするためには収益性との両立が必要不可欠だ。
また、サーキュラーエコノミーに向けた廃棄プラスチックのリサイクルも重要なテーマだが、技術開発や設備投資などの面から一社単独でソリューションを提供することが難しい。政府の支援の下、サプライチェーン全体でシステムを構築していく必要があるだろう。
今回の「石化事業の展望特集」では、各社の石化担当役員の方々に、将来の石化事業やコンビナートのあるべき姿、また事業戦略や環境対策などについて聞いた。
─────────────────────────────────────────────
◇インタビュー◇
旭化成常務執行役員 小野 善広氏
▽構造改革で基盤強化、基盤技術で社会のGHG削減に貢献
出光興産常務執行役員 本間 潔氏
▽環境変化に対応、収益安定化に向けバリューチェーンを強化
東ソー取締役常務執行役員 安達 徹氏
▽中京地区センターの責任、差別化によるポリマー事業の拡大
三井化学専務執行役員 芳野 正氏
▽ニッチ分野に注力しダウンフローを強化・拡大、ボラ低減へ
三菱ケミカル常務執行役員 半田 繁氏
▽社会変化は素材のニーズを大きく変える、問われる新たな視点