新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、炭素循環型社会の実現に向けて微生物や植物を利用したバイオ生産プロセスの開発に着手すると発表した。産業界のCO2削減、炭素循環型社会実現と持続的経済成長の両立という課題に対し、バイオテクノロジーと経済活動を一体化したバイオエコノミーに関連する技術が注目される。
世界のバイオ産業市場は2030年には200兆円規模に拡大すると見込まれる中、日本は世界最先端のバイオエコノミーの実現を目指し、昨年からバイオ戦略を策定。植物・微生物細胞の物質生産能力を最大限引き出す「スマートセル」でバイオプラスチックや高機能化学品を生産するバイオ生産プロセスは、化学プロセスに比べて消費エネルギーは少なく、カーボンリサイクル技術としても期待される。
今回、「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトの実施者を公募し、「データ駆動型統合バイオ生産マネジメントシステムの研究開発」「データベース空間からの新規酵素リソースの創出」「遺伝子組み換え植物を利用した大規模有用物質生産システムの実証開発」の3件を採択した。
バイオ生産プロセスによる物質生産を社会実装するためには、全生産過程のボトルネックの解消が必要だ。微生物や植物を利用した原料から生産までのバイオ一貫生産プロセスの開発に向け、バイオ資源(酵素群・微生物・植物など)の拡充、バイオプロセス工業化に必要な要素技術の開発、各種技術のデータベース化による実生産に適した生産株の育種のための統合解析システムの開発を行う。実生産へ効果的に移行させるバイオファウンドリ基盤(培養・運搬・受託製造など)を整備し、バイオ由来製品の社会実装の加速とバイオエコノミーの活性化を目指す。