ダイセルはこのほど、北海道大学と北海道情報大学との共同研究により、同社が開発した健康食品素材「こんにゃく由来グルコシルセラミド」の摂取がヒト脳内アミロイドβ蓄積を予防し、アルツハイマー病などによる認知機能の低下を抑制・維持できる可能性があることを確認したと発表した。なお、今回の研究成果は、7月に開催された「第75回日本栄養・食糧学会大会」で発表している。
アルツハイマー病などの認知機能低下を引き起こす進行性の疾患は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳細胞外に蓄積することが原因と言われる。これまでの研究では、同グルコシルセラミドをアルツハイマー病モデルマウスに経口投与することで、アミロイドβクリアランス効果を保持する神経由来エクソソームが増加し、脳内アミロイドβの蓄積が抑制されることが判明していた。
そして今回、ヒトが経口摂取した場合での効果を検証するため、両大学との共同研究でプラセボ対照ランダム化二重盲検試験を実施。なお、研究に用いた同グルコシルセラミドは、皮膚の保湿・バリア機能を高める機能性食品素材として販売しており、板こんにゃくの製造時に廃棄される「飛び粉」から抽出製造するサステナブルな原料だ。
グルコシルセラミドは、多くの植物に含まれているが、小麦胚芽や米ぬかなどに比べ、こんにゃく芋の飛び粉抽出物はセラミド含有量が高いことがわかっている。研究では、60~80歳未満の被験者20名(平均70.1歳)をプラセボ食品群10名と被験食品群10名に構成し、プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験を24週間にわたり実施。それぞれの群がプラセボ食品また同グルコシルセラミド5.4mgを含む被験食品を摂取し、0週、12週、24週に血中アミロイドβバイオマーカー値の測定を実施したところ、被験食品群において、0週目との比較で12週目に有意な低値を示した。さらに層別解析を行ったところ、アミロイドβバイオマーカー値が相対的に低めの集団では、摂取12週後、24週後に被験食品群の変化量がプラセボ食品群より有意に低値を示した。
同社は今後、さらなるヒト介入試験を進め、認知機能分野における機能性素材の開発に取り組み、人々の健康長寿に役立つ製品を提供していく。