宇部興産はこのほど、宇部ケミカル工場(山口県宇部市)内にポリイミド(PI)原料モノマー(BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)の工場増設を決定したと発表した。液晶テレビ向け回路基板やスマートフォン向け有機ELディスプレイ、並びにハイブリッド車や電気自動車などの電装品市場拡大に対応するためで、稼働は2023年度下期を予定している。今回の増設により生産能力は現状比60%アップとなることから、昨年度に実施したPIフィルム「ユーピレックス」やPIワニス「ユピア」の設備再稼働・増産に加え、ポリイミド原料の外販市場への供給量を拡大していく。
PIフィルム・ワニスは、電子情報関連機器の回路基板材料などに使用されており、スマートフォン、パソコン、デジタル家電などの市場拡大や高機能化に伴い、今後も需要拡大が見込まれている。同社のPIフィルムはLCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機EL)ディスプレイ分野向けを主体としたCOF(チップ・オン・フィルム)用途で、PIワニスはOLEDディスプレイ用途で、それぞれ高い市場シェアを獲得。また、FPC(フレキシブル・プリント回路板)用途でも販売量の増加が続いている。
こうした需要好調に伴い、昨年度には休止中であった堺工場(大阪府堺市)のPIフィルム製造ラインを再稼働させるとともに、宇部ケミカル工場のPIワニス工場の生産能力も増強した。また、これに伴いBPDA工場のデボトル増産工事も併せて実施しているが、今後さらなる需要拡大が見込めることから、BPDAについても積極的な生産能力増強と安定供給体制の確保が必要であると判断した。
同社は、一連の生産能力増強により積極拡大事業であるPI製品チェーンの事業基盤の強化・拡大を図っていく考えだ。