大王製紙はこのほど、セルロースナノファイバー(CNF)の事業化に向け軽く強い特性を生かした樹脂複合化に取り組む中、セルロース濃度55%のCNF複合樹脂「ELLEX‐R55」の開発に成功し9月から供試を始めたと発表した。
植物由来のCNFの特性を生かした、部分的にCNF化したセルロースの複合樹脂ペレット(濃度10%)のサンプル提供を2018年に開始。用途展開の可能性評価を行う中、最終製品の適性に応じたセルロース濃度や樹脂材料などの設計自由度を高めるために、セルロースの高濃度化を進めた。
「ELLEX‐R55」はセルロース濃度が55%と高く、樹脂成形加工のニーズに合わせ、性能に応じたCNF濃度に希釈して使用できる。セルロース濃度10%程度でも樹脂単体に対し弾性率は1.7倍、強度は1.3倍に向上。材料の厚さの低減、軽量化、減プラスチックなど、環境省のプラスチック循環戦略に掲げる「2030年ワンウェイプラスチック25%減」への貢献も期待できる。
「ELLEX‐R55」は同社紙パルプの製造基幹でCNFの製造拠点でもある三島工場(愛媛県四国中央市)で製造することで、製造・物流コストを低減する。さらなるコスト低減を目指し、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性の飛躍的改善のために新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」プロジェクトに参画し、芝浦機械(静岡県沼津市)と共同で開発を進める。
今後、「ELLEX‐R55」のサンプル提供を通じてニーズに適応した品質改善を進めつつ、CNFの早期事業化を加速させ、経営理念「地球環境への貢献」の取り組みを強化していく。