エア・ウォーターはこのほど、歯髄関連事業を企画・推進するグループ会社のアエラスバイオ社(兵庫県神戸市)は、同社と連携する「RD歯科クリニック」の再生医療等提供計画が厚生労働省で受理されたことに伴い、歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始したと発表した。
歯髄再生治療は、自らの不用歯の歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯で神経を喪失した歯に移植して歯髄を再生する治療で、世界初の実用化となる。現在、ひどい虫歯には抜髄治療が施され、国内で年間600万症例ほど行われているが、歯が折れやすくなり、細菌防御反応や歯髄組織の修復機能も失う可能性が高まる。こうした中、同再生治療で神経や血管を再生し健康な歯を取り戻せるため、QOL向上や健康寿命の延伸が期待される。
同社医療関連事業は、医療用ガスや病院設備などの「高度医療分野」の強化に加え、歯科や衛生材料などの「くらしの医療分野」への拡大にも注力。2011年に歯科関連事業に参入、18年にアエラスバイオ社を設立して歯髄再生治療の事業化に着手、昨年「エア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸」内に歯髄幹細胞の培養・加工・保存設備を整え、安全性や有効性の検証を進めてきた。
今回一連の治療システムが完成し、歯髄再生治療が可能となった。「RD歯科クリニック」での治療は抜歯~培養~移植~検査から成り、1回の費用は50~70万円程度、期間は約1年である。
今後アエラスバイオ社は、エア・ウォーター関連会社の歯愛メディカルの歯科医院向け通信販売ネットワークを活用して同治療の普及を進め、医師向けの講習会や技術支援を行う予定。
今秋には、培養した歯髄幹細胞を長期間冷凍保存する「歯髄幹細胞バンク事業」も立ち上げ、これら関連事業も合せて3年後には年間売上高10億円規模を目指す。また、乳歯や二親等以内の親族の歯から採取した幹細胞による治療も実現も目指す。さらに、歯髄幹細胞は血管や神経組織への誘導能力が高いことから、脳梗塞、脊髄損傷、血管障害など歯科関連以外の再生医療への適用も視野に入れ、引き続き研究・開発に取り組んでいく考えだ。