技術・CNX戦略部 大沼安志氏 /片桐絢也氏
炭素循環社会に向けて、事業ポートフォリオを大幅転換
脱炭素社会・循環型経済へのシフトが進む中、石油会社はどのように対応して生き残りを図っていくのか、またエネルギーや原料の安定供給の責任をどう果たしていくのか、が問われている。
出光興産は、カーボンニュートラル(CN)を実現させるため、今年5月に「CNXセンター」構想を発表。製油所・事業所を低炭素エネルギーの供給拠点へと進化させていく方針を示した。その背景と全体像、各種施策や課題、提言について、今年7月に発足したCNX戦略室の資源循環事業推進グループリーダー大沼安志氏と、水素・アンモニア事業推進グループリーダー片桐絢也氏に話を聞いた。
━CNXセンター構想を打ち出した背景について。
大沼 当社は、2050年のエネルギー事業の環境について、4つのシナリオを描いていたが、コロナ禍により世界の脱炭素化が加速したことで、化石燃料の需要の見通しを「劇的な需要減少」に引き下げた。その前提の下、現在、主要な収益源である化石燃料・基礎化学品から低炭素・資源循環エネルギー、先進マテリアル等の高付加価値製品への収益構造の転換を打ち出し、そのための戦略づくりに取り組んでいる。特に、CO2排出削減のカギとなる製油所については、検討を重ねた結果、「CNX(カーボンニュートラル・トランスフォーメンション)センター」へと進化させる構想を掲げた。
これまでコンビナートでは原油から燃料油と基礎化学品を製造していたが、既存のアセットを活用しながら、原料を合成エタノールや廃食油などの低炭素原料へ置き換え、水素やアンモニアを発電燃料にしていく絵を描いている。
それにとどまらず、廃プラを油化して化学品原料にすることや、地域の焼却センターから熱源を誘導することも視野に入れ、さらにサーキュラービジネスとして、カルシムを多く含む産廃物とCO2を炭酸塩化し高機能材料の原料として活用することや、太陽光パネルやLi電池などの先端材料のリサイクルも手掛けていく。
このように、製油所の敷地とアセット、ノウハウを総合的に最大限活用し、低炭素のエネルギー・素材を供給する事業モデルに変えることが「CNXセンター」のコンセプトだ。
━これらの取り組みは、全製油所に導入していきますか。
片桐 すべての取り組みを、1カ所に集約したり7カ所すべてに導入するということは考えていない。それぞれの製油所の特性を生かし、その地域に適した取り組みを進めていくことになる。
例えば、今年6月に発表したが、アンモニアでは徳山事業所の既存設備を活用したサプライチェーン構築の共同検討をIHIと開始した。これは同地域にアンモニア需要が見込めることが背景にある。他のバイオマス、水素、合成燃料などについても、地域によって取り組み方に違いがあると見ている。
━新たに発足した技術・CNX戦略部の役割について。
大沼 技術・CNX戦略部(CNX戦略室)は、CNXセンターを実現していくことがミッションになる。これまで高機能材等に対する技術立脚型の事業企画やオープンイノベーションに取り組んでいた技術戦略室に、