産総研 SiCウエハー量産技術の大型共同研究を開始

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2021年3月22日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ウエハーメーカーを含む民間企業17社と公的機関3機関との連携で次世代パワー半導体用炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産技術の確立を目指した大型共同研究を開始したと発表した。SiCインゴットを作るバルク単結晶成長プロセスからウエハー化の加工プロセスに至るまで低コスト化を実現する製造技術の開発を進める。

 パワー半導体素子は、大電力を制御する発電・送電システムや、産業用ロボットなどのFA機器、自動車や鉄道などの輸送機器、コンピューターなどの情報通信機器や家電製品に至るまで、幅広く産業・社会に浸透している。現在シリコン(Si)製パワー半導体が主流だが、SiC製パワー半導体素子はエネルギー損失が少なく、新幹線や電気自動車などへの社会実装も始まっている。しかしSiCは極めて堅く安定な材料であるため、単結晶成長やウエハー加工にかかる時間とコストが課題だ。

 SiC単結晶は2000℃以上の極高温の気相雰囲気で成長させるが、成長速度は1時間当たり500㎛~数㎜と遅く、Si単結晶の100分の1以下だ。またパワー半導体として致命的な結晶欠陥も多く残留し、生産効率の良い欠陥排斥技術も未確立だ。直径6インチクラスの大口径SiCウエハーの需要が世界的に高まる中、より高品質なSiC単結晶を高速に成長させる技術の早期確立を目指す。

 またSiC単結晶をウエハーに加工するには、単結晶の切断から研磨まで多くの工程でダイヤモンド砥粒を消費する。加工時間もSiウエハーの6倍以上かかるため、高速でダイヤモンド砥材の消費の少ないウエハー加工技術の確立を目指す。

 これら技術開発の活動の場として、民活型オープンイノベーション共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)」内に材料分科会を新設し、柔軟な産学官連携体制のもとで主に「次世代SiC結晶成長技術開発」や「次世代ウエハー加工技術開発」のプロジェクトを推進している。またSiC結晶成長技術からウエハー加工技術に関わる材料、装置、プロセスの各専門企業が多数連携することで、従来の製造技術の抜本的な技術改革を早期に進められる体制作りを行っており、新規の参入を希望する企業や、研究機関を随時募集している。