宇部興産はこのほど、奥村組土木興業と共同で取り組んだ成果である「宇部伊佐鉱山における岩盤切削機の導入とその効果」が、2019年度資源・素材学会「学会賞(渡辺賞)」を受賞したと発表した。
渡辺賞は、同学会の前身にあたる日本鉱業会の第3代会長である渡辺渡博士の意志に沿って、資源・素材に関する技術の進歩に多大なる貢献をなした個人または団体に対し授与される。1927年から数えて今回で94回目を迎えた伝統のある表彰制度で、両社とも初の受賞となる。
宇部伊佐鉱山(山口県美祢市)は、宇部興産グループの建設資材事業の中核である伊佐セメント工場に隣接しており、セメントなどの原料となる石灰石を年間約800万t採掘。石灰石の採掘では、発破工法が一般的だが、宇部興産は、2012年から宇部伊佐鉱山で奥村組土木興業が所有する岩盤切削機「2500SM」を導入して掘削を行ってきた。
低騒音、低振動、低粉塵という同機の特長を生かして、採掘ラインを民家側へ近づけられたことや、同機で造成した最終残壁(採掘終了後に残る斜面)は安定性が高く、急傾斜化が可能になったことで掘削領域が拡大。それによって、すり鉢状に掘削している当鉱山では、終掘レベルの深部化も可能になるため、可採鉱量の増加が期待できる。
環境意識の高まりから新規鉱山開発が難しさを増す中、既存鉱山での可採鉱量の増加と資源の有効利用は石灰石鉱業界全体の課題となっている。同工法の適用がその解決策の1つとなり、業界への貢献にも繋がるなどの点が評価され今回の受賞に至った。
両社は、今回の受賞を励みに、これまで以上に地域との共生を図りつつ、石灰石資源の有効利用と安定供給に努めていく。