産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ゴムのように柔軟で、金属に匹敵する高い熱伝導性を示すゴム複合材料を、東京大学と開発したと発表した。
産総研のタフコンポジット材料プロセスチームと、東大大学院新領域創成科学研究科の寺嶋和夫教授らは、カーボンナノファイバー(CNF)・カーボンナノチューブ(CNT)の2種類の繊維状カーボンと、環動高分子のポリロタキサンを複合化させることで、金属並みの熱伝導性を実現した。
今回開発したゴム複合材料は、フレキシブル電子デバイスの熱層間材や放熱シート、放熱板などへの応用が期待される。実験ではポリロタキサン中にフィラーとして、サイズの異なる2種類の繊維状カーボン(CNFとCNT)を分散させた。
CNFは太さ200㎚で長さ10~100㎚、CNTは太さ10~30㎚で長さ0.5~2㎚。ゴム材料への繊維状カーボンの分散性の改善と、複合材料中の熱伝導ネットワークの形成が、高い熱伝導性のカギと考えられていることから、分散性改善のため、CNFとCNTを重量比9対1の割合で塩化ナトリウム水溶液に分散し、独自に開発した流通式水中プラズマ改質装置を通して表面改質を行った。
次に、このCNF/CNT混合物を溶媒のトルエン中で、ポリロタキサン・触媒・架橋剤と混合した後、交流電界をかけながら架橋反応させてゲルを作製。得られたゲルをオーブンで加熱して溶媒を取り除き、フィルム状の複合材料を得た。
この複合材料内部の電子顕微鏡像では、表面改質により繭状の凝集体がほぐれ、加えた電界の方向にCNFが配列していた。さらに、配列した大きなCNFに小さなCNTが巻き付き、CNF間をつなぐように分散していた。少量のCNTがCNF同士をつなぐことで、複合材料全体にわたる熱伝導のネットワークが形成され、高い熱伝導性が実現したと考えられている。
今後はCNFの配向条件や改質条件を最適化して、熱伝導性と柔軟性の向上を図るとともに、フィラーの3次元構造の観察や解析を通して、複合材料の構造と特性との数理的関係の解明を進める。さらに、企業との共同研究により、部材とデバイスへの展開・実用化を図る。