帝人 炭素繊維ショートファイバー設備を40%増強

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2020年6月29日

 帝人は26日、同社グループで欧州の炭素繊維事業会社である独・テイジン・カーボン・ヨーロッパ(TCE)が、欧州市場の需要拡大に対応するため、炭素繊維「テナックス」ショートファイバーの生産能力を40%増強したと発表した。すでに稼働を開始している。

炭素繊維「テナックス」ショートファイバー
炭素繊維「テナックス」ショートファイバー

 欧州の電子機器、医療機器市場では、軽量化や耐衝撃性の向上を目的に炭素繊維を使用したコンパウンド製品へのニーズが高い。中でも新型コロナウイルス感染症拡大の影響からレントゲン機器や人工呼吸器などの用途で需要が高まっている。

 「テナックス」は、高強度、高剛性、高い熱変形性などの特長に加え、軽量化が可能な炭素繊維。高品質のコンパウンド製品が電子機器や医療機器などに使用されており、熱可塑性および熱硬化性樹脂を用いた幅広い製品ラインアップでショートファイバーを展開している。こうした中、TCEは欧州の顧客対応力を強化し、多様なニーズに幅広く対応していくため、ドイツでのショートファイバー生産を増強した。

 帝人グループは今後、炭素繊維製品の開発をさらに強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供することで、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していく。

帝人 炭素繊維とPC樹脂が「WALKCAR」に採用

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2020年6月10日

 帝人は9日、炭素繊維「テナックス」を使用した熱可塑性複合材料、およびポリカーボネート樹脂「パンライト」が、cocoa motors.(ココアモーターズ)が開発した、カバンに入れて携帯できるクルマ「WALKCAR(ウォーカー)」に採用されたと発表した。なお、「WALKCAR」は、ココアモーターズのウェブサイトで発売されている。 

炭素繊維とPC樹脂を採用した携帯できる車「WALKCAR」
炭素繊維とPC樹脂を採用した携帯できる車「WALKCAR」

 「WALKCAR」は、世界初の「カバンに入れて携帯できるクルマ」として注目を集めている。サイズは、縦215㎜、横346㎜と13インチのノートパソコンと同等で、重量は2.9㎏と軽量化を実現。これにより最高時速16㎞での走行、1回の充電で7㎞の継続走行を可能とした。また、重心移動による操作が可能であることからハンドルやコントローラーが不要で、フラットなボディから降りることで自動的に停止する安全設計が特長となっている。

 今回「WALKCAR」に採用されたのは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂積層板「テナックス TPCL」と、熱可塑性複合材料織布「テナックス TPWF」、およびポリカーボネート樹脂「パンライト」。「テナックス」は、鉄の10倍の強度と4分の1という軽量性を持ち、「パンライト」は、ガラスの約200倍の耐衝撃性と2分の1という軽量性を持っている。これらの素材をボディに用いることで、「WALKCAR」の特長である軽量性と耐久性を実現した。 

 帝人グループは、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンの実現に向けて、これからも多彩な高機能素材を活用し、様々な分野に対してソリューションを提供していく。

帝人 炭素繊維複合材料がドイツの鉄道橋ケーブルに採用

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2020年5月28日

 帝人は27日、炭素繊維「テナックス」を使用した炭素繊維複合材料(CFRP)が、ドイツのシュトゥットガルトにあるシュタットバーン橋のケーブルに採用されたと発表した。

帝人の炭素繊維が採用されたシュタットバーン橋①
帝人の炭素繊維が採用されたシュタットバーン橋

 シュタットバーン橋は、鉛直に加わる力を、上方に弓のように反った曲線(アーチ)構造を使って荷重を支えるアーチ橋。全てのケーブルにCFRPを採用したアーチ橋の建設は、世界で初となる。

 シュトゥットガルト近郊のA8高速道路上に架かるシュタットバーン橋は、全長127mの鉄道用アーチ橋で、重量比強度の高いCFRP製ケーブルを使用することにより、8車線ある高速道路上を支柱なしに横断できる構造を可能とした。

 このアーチ橋の72本のCFRP製ケーブルには、同社の炭素繊維「テナックス」が使用されており、鉄鋼製のケーブルに比べ、断面積は4分の1で同等の強度を持ち、低コスト化を実現。また、大幅な軽量化により、クレーンを使用せずにケーブルを設置することが可能となり、鉄鋼製ケーブルの使用時に比べてCO2排出量は3分の1、エネルギー消費量は2分の1になった。

 帝人は今回の採用を契機として、炭素繊維の建築・建設用途に向けた展開強化を進めるとともに、持続可能な社会の実現に向けたソリューション提供を強化し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していく。

 

 

帝人の3月期 PCの市況低迷などで減収減益も

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2020年5月11日

アラミド繊維、国内ヘルスケア事業が収益に貢献

 帝人は8日、2019年度(2020年3月期)連結業績のオンライン説明会を開催した。売上高は前年度比4%減の8537億円、営業利益6%減の562億円、経常利益10%減の543億円、純利益44%減の253億円。

決算説明を行う園部専務
決算説明を行う園部専務

 園部芳久代表取締役専務執行役員CFOは19年度の実績について、「アラミド繊維や国内ヘルスケア事業、IT事業が好調を維持し収益獲得に貢献した」ものの、一方で「主力医薬品の欧米後発品発売やポリカーボネート(PC)樹脂の市況低迷が下方影響を与えた」と総括した。また新型コロナウイルス感染症の影響については、

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帝人 知財に関する新型コロナ感染症対策支援宣言を実施

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2020年5月11日

 帝人は8日、新型コロナウイルス感染症の蔓延終結を目的とした行為に対し、一切の対価や補償を求めることなく、保有する特許権・実用新案権・意匠権・著作権の権利行使を一定期間行なわないことを宣言する活動に、発起人の一員として参画し、知的財産に関する「新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」を実施したと発表した。

 感染症の蔓延を食い止めるためには、業界の垣根を越えた、治療薬やワクチン、医療機器、感染防止製品などの開発・製造を産官学が連携し、従来の常識や固定観念に捉われないスピードで進める必要がある。

 同宣言は、新型コロナウイルス感染症対策のための開発・製造に関しては、権利者が持つ特許権、意匠権、ソフトウエアプログラムの著作権、その他の知的財産権の権利行使を行わないことを表明するもの。これにより、参加企業が保有する知的財産権に対する侵害調査や、ライセンスを受ける交渉などを行う必要がなくなり、迅速かつ最善の開発と製造が可能となる。

 

帝人 CFRTP製の荷台が「PACEアワード」を受賞

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2020年5月8日

 帝人は7日、同社グループで軽量複合材料部品の開発・生産・販売を手がける米国のコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP社)とともに、「PACE(Premier Automotive Suppliers, Contribution to Excellence)アワード」を受賞したと発表した。 

 帝人 2020-PACE-Winnerロゴ米国の自動車専門媒体「オートモーティブ・ニュース」が主催する「PACEアワード」は、自動車産業の革新的な技術に贈られる賞で、20年以上の歴史がある。

 今回受賞したのは、帝人の熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)製品である「Sereebo(セリーボ)」を利用し、帝人とCSP社が、米ゼネラルモーターズとの共同によりピックアップトラック向けに開発したピックアップボックス(荷台)の「カーボン・プロ」。

 世界初の量産自動車向けCFRTP部品「カーボン・プロ」は、「Sereebo」を用いることで、スチールを使用したピックアップボックスに比べて約40%の軽量化を実現するとともに、約10倍の耐衝撃性を持つほか、耐腐食性にも優れる。

 また、従来の素材では量産できなかった複雑なデザインの成形にも対応することができ、リサイクルも容易になった。今回の受賞は、こうした特性が高く評価された。なお、「カーボン・プロ」はこれまでにも数々の受賞実績があり、「PACEアワード」は4回目の受賞となった。

 帝人グループは、「自動車向け複合材料事業の展開」を「将来の収益源育成:ストラテジックフォーカス」分野に位置づけている。今後も、複合化を強みとした技術開発に一層注力し、車体の軽量性と強度に加え、デザイン・生産性・コスト効率など、様々な顧客ニーズに対応できるソリューションプロバイダーとして、グローバルに事業を展開していく考えだ。

2019 GMC Sierra Denali CarbonPro Edition
CFRTP製品「Sereebo(セリーボ)」を用い、帝人とCSP社が、GMとの共同によりピックアップトラック向けに開発したピックアップボックス(荷台)「カーボン・プロ」

帝人 米ヘルスケアVCに出資、新規製品創出などを強化

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2020年4月15日

 帝人はこのほど、米国のヘルスケアベンチャーキャピタル(VC)ファンドであるメドテック・コンバージェンス・ファンドに、最大で約9000万米ドル(約100億円)の出資を行うと発表した。

 同ファンドは、米国のVCであるSVヘルスインベスターズ(マサチューセッツ州)が運営。帝人は今回の出資を通じ、米国を中心に欧州やイスラエルなどを対象地域としたアーリーステージ企業への投資を行うことで、ヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を推進する。

 帝人グループは、中期経営計画「ALWAYS EVOLVING」(2020~22年度)の中で、ヘルスケア事業領域の中長期戦略として、医薬事業・在宅医療事業で培った強みを生かした地域密着型の総合ヘルスケアサービス事業の展開を掲げている。一人ひとりの健康生活のサポートを目指し、画期的なヘルスケア製品やサービスの創出に向けた取り組みを強化していく方針だ。

 メドテック・コンバージェンス・ファンドには、米VCのノリッジベンチャーズ(マサチューセッツ州)のパートナーも参画しており、共同で投資活動を行っている。SVヘルスインベスターズとノリッジベンチャーズは、米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資や事業育成に優れた実績があり、投資による資金援助だけでなく、取締役の派遣や戦略的な提言など経営にも深く関与し、多くの医療機器関連のスタートアップ企業を支援してきた。

 こうした中、帝人は、米国の両VCとヘルスケア領域へのソリューション提供で目指すべきビジョンが一致していることから、今回の出資を決定。帝人は今後、メドテック・コンバージェンス・ファンドに社員を派遣し、グローバル市場でのヘルスケア事業展開に向けたパートナーシップを長期的に強化していく。また、共同でインキュベーション活動を推進し、医療機器・サービスに関連した帝人グループの研究開発機能の活性化を目指す。

 少子高齢化が進展する日本のみならず、世界中で製品、サービスとデジタル技術の組み合わせによるヘルスケアソリューションの価値がますます高まる中、同社グループは、高品質な製品と専門性の高いサービスを提供することにより、患者のQOL向上に努めていく。

帝人グループ 「ヘルスケア化学研究棟」が稼働開始

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2020年4月9日

 帝人と帝人ファーマはこのほど、ヘルスケア事業の有機合成および分析の化学研究・開発を加速するため「ヘルスケア化学研究棟」を新設し稼働を開始したと発表した。総工費は約16億円。

ヘルスケア化学研究棟
ヘルスケア化学研究棟

 帝人グループは、中期経営計画「ALWAYS EVOLVING」(2020~22年度)の中で、ヘルスケア事業領域の強化・拡大を掲げ、中核をなす医薬品事業・在宅医療事業の推進、新規に進める機能性食品事業の拡大や地域密着型総合サービス事業の創出などに取り組んでいる。

 こうした中、ヘルスケア研究の拠点である東京研究センター(東京都日野市)の敷地内に、有機合成と分析研究を担う化学研究棟(2階建て、延床面積約1800㎡)を新設。実験エリアと非実験エリアの完全分離、研究員の動線・視線を考慮したレイアウト、快適なコミュニケーションエリアの確保など、安全性と機能性に最大限の配慮をした研究施設となっている。

 帝人グループは、「ヘルスケア化学研究棟」を最大限に活用し、合成医薬品や新ヘルスケア事業の研究開発をさらに推進し、画期的なヘルスケア製品やサービスを創出することで、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指す。

【化学企業 入社式訓示③】帝人 鈴木純社長

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2020年4月6日

 私は37年前にバイオテクノロジーの研究者として入社した。当時はまさか社長になるとは思っていなかったが、会社は様々な仕事の機会を与えてくれた。その多くは門外漢だったが、好奇心を持って、常に明るく前向きに取り組んだことが今の自分につながっていると実感している。

 皆さんにも、変化を糧に大きく成長すべく、失敗を恐れず、情熱を持って仕事にチャレンジすることを期待している。

 会社は大きな変化・進化の真っ只中にある。各自の職場で大いに力を発揮し、帝人グループをより素晴らしい、より力強い、社会で存在感のある会社に変えていってほしい。

 皆さんに期待を込めて3点申し上げる。第1に、社内外のコミュニケーションを大事にしてもらいたい。現代はダイバーシティ&インクルージョンの時代だ。お客様や上司・先輩・同僚など、社内外の様々な価値観を持つ人たちときちんとコミュニケーションし、お互いに多様性を受け入れ、自分の考えを発信し合うことで、新たな考えや発想を生み出していく。1足す1を3にも4にもする、そんな考え方や仕事の進め方が求められている。

 第2に、仕事は、明るく・楽しく・真面目に・一生懸命に取り組んでいただきたい。皆さんには大きな可能性があり、どんな仕事にも必ずやりがいがある。仕事の価値は取り組む姿勢で大きく変わる。まずは上司や先輩の指導を素直に受け入れ、乾いた砂にしみこむ水のように知識やスキルを吸収して自分のものにし、3年でその道のプロになることを目指してほしい。

 第3に、何事にも挑戦し続けてもらいたい。今は新たな価値創造への挑戦が求められている。しかし、仕事は1回の挑戦で成功できるほど甘いものではなく、成功は最も忍耐強い人にもたらされる。1度や2度の失敗で諦めず、最後までやり抜く姿勢を持ってもらいたい。会社は大きな成長と活躍の場を用意している。

 皆さんは会社の歯車の1つではなく、1人1人がエンジンだ。今、皆さんが抱いている意欲や情熱、志に加え、「会社を動かし、さらなる飛躍を実現するのは、他の誰でもなく自分自身なのだ」という当事者意識と主体性を持ち続け、自身が誇りに思える会社生活を築いてもらいたい。

 

帝人 熱可塑性炭素繊維複合材がパナソニック製ビデオに採用

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2020年3月23日

 帝人は19日、熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)製品である「Sereebo(セリーボ)」が、パナソニックのデジタル4Kビデオカメラ新製品「HC‐X2000」と「HC‐X1500」に採用されたと発表した。

「HC‐X2000」
「HC‐X2000」

 両新製品とも、テレビ放映向けなどプロフェッショナルな現場での映像撮影も可能な「4K60p・10bit」に対応したビデオカメラであり、「HC‐X2000」については、従来の機種と比較し約40%の小型化、約15%の軽量化と、連続撮影時間約4時間35分を実現し、ビデオカメラとしての機動性も持っている。

 一方、「Sereebo」は、製造タクトタイムを大幅に短縮したことで、電気製品や自動車などの部品の量産を可能にした革新的なCFRTP製品。その中でも、今回採用されたのは、帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」をマトリックスとした射出成形向けのもので、ハンドルユニットおよびトップカバー部分に使用されている。

 従来、カメラの筐体やボディの軽量化と強度を両立させるために、チョップドファイバーと呼ばれる炭素繊維が使用されるが、これは繊維長が短いことにより強度特性の担保が課題。

 それに対して「Sereebo」は、帝人独自の樹脂組成技術により、軽量化と高い強度特性の両立のみならず、優れた難燃性も実現する。また、独自の樹脂加工技術により、表面に炭素繊維が浮き出ることがなく、表面外観性にも優れている。こうした特長がパナソニックに高く評価され、共同で成形品の開発を重ねた結果、今回の採用に至った。

 帝人は、精密機器・電気製品など、量産性や強度、軽量化が求められる用途に向けて「Sereebo」の展開を強力に推進し、複合成形材料のリーディングカンパニーとして地位を確立していく考えだ。