エア・ウォーター 小規模農家用乾式メタン発酵システム

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2020年12月22日

 エア・ウォーターはこのほど、グループのエア・ウォーター北海道(北海道札幌市)が北土開発(北海道芽室町)、帯広畜産大学と共同で国内初の小規模酪農家向け乾式メタン発酵プラント(バイオガスプラント)を開発したと発表した。乳牛飼養百頭前後の小規模酪農家に適したバイオガスプラントの実用化に取り組む新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業「小規模酪農家向けエネルギー自給型乾式メタン発酵システムの開発」の一環。

 小規模酪農家は一般的に乳牛を「つなぎ飼い」し、麦わらなどの長繊維が混合した半固形状ふん尿が排出され、メタン発酵には適さない。現在北海道で稼働する約100基のバイオガスプラントの多くは液状ふん尿を原料とする湿式メタン発酵プラントであり、半固体状ふん尿の処理には高額な大型設備を必要とする。そのためバイオガスプラントの導入は資金力のある大・中規模農家に限られ、約75%を占める小規模農家での導入はハードルが高い。また近年、濃厚飼料の給餌量増加や堆肥化用の水分調整資材の高騰で、家畜のふん尿による完熟堆肥化が困難になり、メタン発酵処理に切り替える動きも背景にある。

 今回開発した「乾式メタン発酵システム」は原料自動投入装置、原料前処理槽、高温乾式メタン発酵槽、固液分離装置、ガス発電機(25kW)、燃料電池から成り、1日の処理能力は6.2t。高温発酵(約50℃)によりメタン発酵効率が30%向上した。現在バイオガス(メタン約58%)の多くをガス発電機に供給し、ほぼ24時間、電気と温水を牛舎に安定供給している。

 余剰のバイオガスは高純度メタンガス(98%以上)に精製し、さらに水素に改質し、燃料電池から牛舎や住宅に電気を供給する。蓄電池を利用したエネルギーの最適化や再配分、長期連続運転による設備の安定性や製造コストの低減などを検証する予定だ。なお、メタン発酵の副産物である消化液や固形残渣は、酪農家の代替肥料や再生敷料として活用する。

 今後、このシステムを小規模酪農家を中心に提案し、系統電力に頼らない自給自足型のエネルギー分散型基地として普及させ、酪農家の営農コストの低減と地産地消型エネルギーの推進、CO2排出量の削減に寄与することを目指す。