中外製薬はこのほど、AIを用いた抗体創薬支援技術「MALEXA-LI」に関する論文が、ネイチャー・リサーチ社が発行する「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。同誌はオンラインの総合科学誌であり、出版論文数では世界最大の学術雑誌に位置づけられている。
中外製薬は、デジタル戦略の最終目標として、「デジタルを活用した革新的な新薬創出」を掲げ、AIをはじめとした先端技術の活用による新規医薬品候補の創出や創薬の成功確率向上といった研究プロセスの劇的な変革を目指している。
「MALEXA」は同社が独自に構築したAI技術であり、「機械学習×抗体」で創薬プロセスを変えることを期待している。同技術には抗体創薬プロセスで最適化した「MALEXA-LI」と「MALEXA-LO」の2種類がある。
今回掲載された「MALEXA-LI」は、MALEXAにより抗体の「種」となるリード抗体に適した配列を見つけるAI技術。中外製薬が長年の抗体医薬品研究から蓄積した抗体ライブラリーから次世代シークエンサーを用いて遺伝子配列情報を取得し、解析したデータを訓練データとする機械学習モデルを構築した。
また、今回の論文では、標的抗原に結合する抗体配列を選抜するために、深層学習のアルゴリズムの1つであるLSTM(長・短期記憶)に基づく配列生成法を開発し、高い結合活性をもつ抗体配列を探索。その結果、「MALEXA-LI」が提案するアミノ酸配列が、既存の抗体と比較し、標的抗原に対して1800倍以上結合強度の高い抗体であることが立証されている。